異形たちによると世界は… / coco

異形たちによると世界は…

Ｈ・Ｐ・ラヴクラフトが創始し、今も多くの作家たちに書き継がれているクトゥルー神話には、宇宙的恐怖の権化たる怖ろしい姿の邪神たちが登場するのですが、もしこの邪神たちが女の子だったら？　かわいい邪神たちのなんだか恐怖な日常を描いた非現実コミック！

cocoさんといえば作者のブログに登場しその後早川書房からデビューした『今日の早川さん』が有名だろう。この『早川さん』が丸っこい描線で描かれた本好きの女の子たちが巻き起こす騒動を描いたコメディだとすれば、この『異形たちによると世界は…』はラブクラフトのクトゥルー神話に登場する邪神たちを丸っこい描線の女の子に擬人化し、コズミック・ホラーなコメディを展開した4コマ漫画として完成させている。そしてどちらの作品にしても、登場人物たちがどこかおっとりしているのがcocoさんの作風なのだろう。
自分は熱心なクトゥルー小説ファンではないし、クトゥルー神話の知識もたいした無いのだが、にもかかわらずきちんとキャラ分けされた登場人物（登場邪神？）たちの愉快な行動ぶりを見ていると、なんだかクトゥルー・キャラに愛着が湧いてきて、さらにクトゥルー神話が分かったような気にさえさせられるから面白い。ファンのみならず、逆にクトゥルー初心者でも十分楽しめ、さらにクトゥルー作品への入門書ともなりうる作品なのではないかと思う。
そしてこれら4コマ作品の他に作者オリジナルのクトゥルーショートコミックが数編挿入されているのがとてもいいアクセントになっている。4コマ作品が三頭身キャラがワイワイと騒ぐほんわかしたコメディだったのに比べ、こちらはリアルタイプのキャラが登場するシリアスでダークなホラー・ストーリー。絵的にも黒々としたソリッドなコントラストを多用しており、cocoさん独特の色彩である美しいペール・トーンの使い方も含め、『ヘルボーイ』原作のマイク・ミニョーラを髣髴させるものがある。物語的には決してどぎついものではなく、日常生活にポッカリと空いた異次元世界へ足を踏み入れてしまうような恐怖を描いたものが多い。このホラー・ストーリーはもっと読んでみたかった。
そして作品集の合間合間にはリアルタイプの等身になったクトゥルー女子たちがポーズを取るサービスショットが挿入され目を楽しませてくれる。ただひつとだけ注文をつけるなら、今度はもっとセクシーな感じで攻めて下さい！