身障者!ホームレス!だけど俺たちゃ最高のミュージシャン!〜ドキュメンタリー映画『ベンダ・ビリリ! 〜もうひとつのキンシャサの奇跡〜』

■ベンダ・ビリリ! 〜もうひとつのキンシャサの奇跡〜 (監督:フローラン・ドラテュライ、ルノー・バレ 2010年フランス映画)


身障者でホームレスという社会の最底辺に生きる人間たちによって作られたバンドが、世界に熱狂的に受け入られるまでを追ったスンゴいドキュメンタリー映画です。舞台はアフリカ・コンゴの都市キンシャサ、ここで結成されたバンド「スタッフ・ベンダ・ビリリ」は車椅子4名と松葉杖1名、そして彼らに見出されたストリート・チルドレンによって構成されています。全員が路上生活者、しかも持っている楽器は弦が1本だけのギターや空き缶と木切れだけ作った手製楽器だったりするんですが、その奏でられる音楽が凄い!素晴らしい!
(↓これが空き缶楽器)

基本はアフリカン・ミュージックなんですが、きちんとポップ・ミュージックのキャッチーさも兼ね備えていて、決して器用なだけの音楽ではない親しみやすさがあるんですね。「可哀想な人たちがやっている音楽だから聞いてみたら案外まともだから評価してやろうじゃないか」みたいな上から目線の賞賛のされ方とは全然違う、スゲエ音楽やってる人たちがたまたま身障者でホームレスだったとしかいいようのない才能に溢れているんです。

いや、勿論、彼らの作った音楽にはそういった不幸な生い立ちや彼らの住む社会の歪みというものを原動力にしている部分は絶対にあるんです。彼らの作る音楽と彼らの背景は不可分なんです。当然、「車椅子の人たちがぶっ飛ぶような音楽やってる!」というビジュアル面でのインパクトだってあるんです。でも普通ならマイナス面としか捉えられない部分を「でも俺らのやってる音楽はこんなに素晴らしい!」とぜーんぶプラスに変換し、圧倒的な生命力に満ちた音楽として完成させているんですね。そこには痛々しさや悲惨さを微塵も感じ押させないパワーが存在するんですよ。

映画では下半身麻痺の人たちばかりで結成したサッカーチームの試合も描かれますがこれも凄かった(「凄い」とか「凄かった」ばかりの文章ですね)。彼らは車椅子で戦うんじゃなくて、両手を使って這いずり回りながらボールを追うんです!このビジュアルがまた悲惨さを吹き飛ばすパワフルさで度肝を抜くんですね。しかしベンダビリリのバンドメンバーをはじめなんでこれだけ下半身不随の人がいるのかというと、これは伝染病であるポリオによるものらしいんですね。こういった部分で途上国の問題点を描いたりもしているんです。ベンダビリリのメンバーが乗るバイクを改造した「手回しギアハンドル車椅子」もなんだかいかしていて、貧乏だからそんなものを作るしかなかったのでしょうが、こういったものにすら彼らのタフネスさを感じました。
(ちなみに劇場公開中見逃してしまい、かといって国内盤ソフト発売のアナウンスも無いので、輸入盤Blu-rayを購入しての鑑賞となりました)
『ベンダ・ビリリ!〜もう一つのキンシャサの奇跡〜』HP

■スタッフ・ベンダ・ビリリ・ライブ風景

■『ベンダ・ビリリ!〜もう一つのキンシャサの奇跡〜』予告編


屈強のコンゴ魂

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