映画『アジャストメント』は実はゆるふわラブロマンス映画だったッ!?

■アジャストメント (監督:ジョージ・ノルフィ 2011年アメリカ映画)


ブレードランナー』のP・K・ディック原作、『ジェイソン・ボーン』シリーズのマット・デイモン主演、映画のテーマが「世界の裏側で密かに人々の運命を調整している組織があった!?」だという映画『アジャストメント』、おおこりゃいったいどんだけスリルとサスペンスと不条理に満ちたSF映画になっておるのだろう、と期待しながら観に行ったオレなんですよ。
主人公はマット・デイモン演じる上院議員候補のデヴィッド。冒頭は彼の選挙の様子が描かれるんですが、ちょっとやんちゃ坊主入った若手の議員候補をマット・デイモンがとっても明るく溌剌とした様子で演じているんですね。自分、結構マット・デイモンは好きなのですが、このなかなか好青年な主人公も、最初からとても印象が良いんですね。その彼はひょんなことからとても魅力たっぷりな女性エリース(エミリー・ブラント)と知り合います。エリースは頭の回転が速く会話が非常に楽しい女性で、会ったばかりだというのにデヴィッドはすぐさま彼女に魅せられちゃうんですね。
この二人の出会いのシーンがなぜか男子トイレで、そんなちょっとおかしなシチュエーションの中で見初めあう二人の雰囲気がとてもいいんです。この二人にパッと恋の花が咲いた描写が素敵で、見ていて「ああ、別にスリルとサスペンスのSF映画じゃなくて、オレの大好きなマット・デイモンと、美人な彼女のゆるふわラブ・ロマンスがこっから描かれてもオレは許しちゃうなあ」とちょっと思っちゃったんです。しかーし!ちょっと思っちゃったのが運の尽き!なんとこの映画、スリルとサスペンスのSF映画でもなんでもなくて、実はホントに、単なるゆるふわラブロマンスとして展開してゆくんですよ!
映画のポスターはこんなサスペンス・タッチですが、

実際はこんなポスターでも全然構わなかったような映画だったんです!

映画はこのあと、お待ちかねの【運命調整局】の連中が出てきます。この連中、どこでもドアみたいのを使って空間を飛び越えることができたり、超能力で電話の内容や人の行動を意のままに操ることができるという謎の連中なんですね。彼らはこの能力を使って今まで人類の運命に介入し、人類を善い方向に導こうとしている、とのたまってるんですね。で、この【運命調整局】の連中が、こうして出会った二人の邪魔をし始めるんです。それというのが、主人公のデヴィッド君、将来世界を変える大物政治家になる運命なんですが、この彼女と付き合っちゃうと、たいした人間にならず、世界をいい方向に変えられないから、だというんですね。
しかーしそんな「別れさせ屋」の言う事を「はあそうですか」と大人しく聞くデヴィッド君じゃありません。確かに一回は諦めるんですが「いや、ボクの人生に本当に必要なのは彼女なんだ!」とばかりに"調整された運命"を覆そうと果敢な戦いを挑むんですね!しかしよく考えてみると、こんなふうに「恋する二人が周囲の反対や障害にもめげずお互いの愛を成就させようと奮闘する」のって、恋愛ドラマによくあるプロットですよね?つまりはこの映画、【運命調整局】というファンタジーな要素を盛り込みつつ基本はラブロマンス映画なのであって、派手なスペクタクルが展開するSF映画を期待して観るとがっかりしちゃうんですが、ラブロマンスものなんだと納得ずくで観れば、意外と悪い出来でもなかったりするんですよね。ラブロマンスものなんて適度にユルくて能天気でナンボですからね。監督もはなからその意図でこの映画を撮ったんでしょう。だからあの大甘過ぎるラストも、「まあいいじゃん」なんて許せちゃうんだと思いますよ!

■アジャストメント 予告編