『チョコレート・ファイター』のジージャ主演アクション映画『Raging Phoenix』

■Raging Phoenix (監督:ラチェーン・リムタラクン 2009年タイ映画)


この『Raging Phoenix』、アクション映画『チョコレート・ファイター』で注目を浴びた格闘少女ジージャ・ヤーニンの次回作ということでちょっと楽しみにしていたのだが、タイ本国ではとっくに公開されているのに待てど暮らせど日本公開の噂を聞かず、それじゃあってことで輸入版のBDを購入、こっちのほうで鑑賞する事にした。BDは日本語字幕無しなのだが、基本アクション映画なので言葉が分からなくても困らんだろうと英語字幕で鑑賞。でもオレの英語力と言ったら爆撃後のドレスデンのように壊滅的なので、理解してないか誤解してるかの部分も多々あると思う…。間違っていたらゴメンナサイ。

さてお話はというと女性ばかり狙う謎の誘拐組織と主人公ジージャ、そして仲間たちとの拳飛び交う戦いを描いたもの。冒頭ロック・バンドのドラマーとして登場するジージャ、しかし彼女はトラブルを起こしてバンドを追い出され、自棄酒してウロチョロしている所を怪しい連中に拉致られそうになる。しかーしそこに現れたのが滅法腕のたつ男サニムとその仲間たち!ジージャは敵を倒した彼らに付いて行き、海岸近くにある彼らの隠れ場で拳法を教わりながら共同生活を始める。そしてジージャはサニムらがかつて愛する女性を誘拐組織に連れ去られ、彼女らを取り戻す為にここで計画を練っていることを知る。日に日に腕を上げてゆくジージャ、そしてある日誘拐組織のアジトが発見され…というもの。

ジージャとサニムたちが操るのは酔拳+カポエラのような拳法なんだよね。酔拳のトリッキーな動きとカポエラのクルクル回るアクションは見栄えがするとは思うが、『チョコレート・ファイター』でのスピード感に満ち直線的で破壊力に溢れるアクションと比べるとどうも凄みに欠けるんだよなあ。前作にあった観る者にまで打撃の痛みが伝わってくるような迫力がこの『Raging Phoenix』には足りないんだ。後半で披露されるジージャとサニムがひとつに組み合わさって繰り出される合体技も、組体操を見ているようで面白いといえば面白いのだが、なんだかダンスでもしているようにしか見えなくて、"命を懸けた真剣勝負"っていう緊迫感が沸いてこない。というか二人別々に攻撃したほうが効率がいいんじゃないのかとさえ思えた。新しいことをやろうとしていたのだろうが、『チョコレート・ファイター』のアクションを期待して観ると肩透かしを食らってしまうかもしれないな。

物語もちょっと納得できない部分があって、これは字幕が理解出来ていなかったからだと考えられるんだが、ジージャとサニムたちがなんで海辺の廃墟に住み着いて呑気に拳法の特訓に明け暮れることが出来るのかよく分からなかった。この人たちはいったいどうやって生活しているんだろう?何食って生きてるんだろう?なんだか生活感が希薄なのでキャラクターが薄っぺらく感じてしまうのだ。で、ジージャはなんであんなに短期間の特訓で大の男を打ち負かすような技術を会得できたんだろう?サニムたちはジージャなんか構ってないでさっさと敵の本拠地を叩き女性たち助けるべきなんじゃないのか?(すぐに敵を叩かず様子をうかがっていたのはきっとどこかで説明されているような気がするな)

見所も無いわけではない。クライマックスはなんだかインディ・ジョーンズ映画みたいなところで戦うのだが、ここはハッタリが効いてちょっと面白かった。「いったいどこなんだこの国!?」と思ってしまうような凄いロケーションで、ここでの吊り橋を駆使したアクションも含め盛り上がったな。そしてなによりも悪の組織のボスキャラが凄かった!なんと和田アキ子が出て来るんだよ!正確には和田アキ子似のデカくて凶暴な女なんだけどね!これがまたつええんだ!オレ正直に言うと年端も行かない小娘のジージャよりも迫力あるボディで迫り来るこの女ボスキャラの方に目が釘付けだったよ!うおおおおあんなデカイ女に組み伏せられて「どや?降参か?降参か?」とか耳元で囁かれてみてえ!とか言っても和田アキ子が好みだって言う意味では断じてないからその辺誤解の無いように!

(追記)もう少し好意的に書こう。2008年に公開された前作『チョコレート・ファイター』は4年のトレーニングの後2年掛けて撮影された作品だ。これはジージャ・ヤーニンというアクション映画俳優の原石が持つポテンシャルをどこまで引き出すことが出来るかという映画だったのだろう。続くこの『Raging Phoenix』はその翌年2009年に公開されているが、ここでは『チョコレート・ファイター』でその実力を確かめることが出来たジージャに、前作とは違うバラエティに富んだアクションを演じさせたかったのだろう。ちなみに『Raging Phoenix』の日本におけるアジア映画祭公開時のタイトルは『ジージャー:頑固に、美しく、猛々しく』だったらしいが、これは実はタイ語原題を直訳したものらしい。このタイトルを見て思ったのは、製作者側はジージャを「ガチバトルのできる女戦士」ではなく「アクションの冴える美少女アイドル」として売りたいのではないかということだ。本国でもアイドル人気が高まっているという話もどこかで読んだし、『Raging Phoenix』は意外とこういったアイドル映画の文脈で撮られたものなのかもしれない。


チョコレート・ファイター [DVD]

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