ヘルボーイ:百鬼夜行 / マイク・ミニョーラ

ヘルボーイ:百鬼夜行 (JIVE AMERICAN COMICSシリーズ)

ヘルボーイ:百鬼夜行 (JIVE AMERICAN COMICSシリーズ)

映画化もされ人気を博した『ヘルボーイ』のオリジナル・コミック最新刊である。『ヘルボーイ』シリーズはこれまでも数巻発売されているが、どの作品も世界の様々な神話、伝説、伝承、宗教、秘法、呪術を織り込んだゴシック風味満載のハードボイルド・オカルト・ストーリーとして展開している。
今作『百鬼夜行』は、前作『闇が呼ぶ』に続くヘルボーイ新3部作の中核となる物語だ。前作ではロシアの魔女バーバ・ヤガ、スラブ神話の魔神コシチェイとの戦いが描かれたが、終盤、ヘルボーイに復讐を誓う小鬼グルアガッハにより地底から引き上げられた封印の小箱の縛めが解き放たれ、強大な力を持つ残忍狡猾な血の女王が甦ることとなる。世界の全てを破壊しようと企む血の女王の軍勢を阻止するため、イングランドの魔女モーガン・ル・フェイをはじめとする魔道の勢力ヘルボーイに彼自身の真の姿とその秘められた力を教授し、血の女王との戦いを促す。地獄の王子であるヘルボーイの、もうひとつの姿とは何なのか。今回はアーサー王伝説にまでも踏み込み、これまで以上にスケールの大きなオカルト世界を垣間見せる。
一応舞台は現代なのらしいが、太古より存在する魔の眷属たちとの戦いは、どこか時間も空間も超越した、それ自体がひとつの神話をなぞるかの如き様相を呈している。ヘルボーイを主人公とした強大なオカルト体系、それがこの物語なのだとも言える。さて次巻ではいよいよこの世の魔族どもの雌雄を決する最終決戦が描かれることになるのだろう。1年後か2年後か、日本語版発売は相当待たされる事になると思うが、これまでで最も期待の持てるヘルボーイ作品となるに違いない。