ボトムズ / ジョー・R・ランズデール

ボトムズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ボトムズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ボトムズ (ハヤカワ・ノヴェルズ)

ボトムズ (ハヤカワ・ノヴェルズ)

暗い森に迷い込んだ11歳のハリーと妹は、夜の闇の中で何物とも知れぬ影に追い回される。ようやくたどり着いた河岸で二人が目にしたのは、全裸で、体じゅうを切り裂かれ、イバラの蔓と有刺鉄線で木の幹にくくりつけられた、無残な黒人女性の死体だった。地域の治安を預かる二人の父親は、ただちに犯人捜査を開始する。だが、事件はこの一件だけではなかった。姿なき殺人鬼が、森を、そして小さな町を渉猟しているのか?森に潜むと言われる伝説の怪物が犯人だと確信したハリーは、密かに事件を調べる決心をする―鬼才が恐怖の原風景を描き、最高の評価を得た傑作ミステリ。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。

ジョー・R・ランズデールの”ハップとレナード”シリーズ以外の長編を読むのは『モンスター・ドライブイン』以来これが2冊目だ。『モンスター・ドライブイン』がハチャメチャ・スプラッター・ホラーだったのに対しこの『ボトムズ』はずっとシリアスな物語になっている。
この『ボトムズ』は1930年代のアメリカ、未だ西部開拓時代の貧しい生活と強烈な人種差別の名残を残すアメリカ・テキサス東南部の町を舞台に、幼い少年がある連続殺人事件を通し成長してゆく、という物語だ。単なるミステリの枠にとどまらず、近代アメリカ西部の生活風俗、人種問題、そして低湿地帯=「ボトムズ」のむせ返るような自然描写とそこで少年が見る現実とも幻想ともつかない怪異を描き、作者ランズデールの新たな領域を開拓した小説といわれている。
本国ではMWA賞を受賞し、日本でも書評などを読むと大変評価の高い作品なのだが、オレとしては決して退屈な作品ではないにしても大絶賛するような傑作というほどでもないような気がした。これは作品の質というよりもオレ自身の好みの問題なのかもしれないが、まず、言っちゃ悪いとは思うがアーリー・アメリカのビンボ臭い田舎の光景、そして野卑で野蛮な前近代人というのがオレはあまり好きじゃないのだ。それと合わせ、オレは子どもが主人公になっている物語が苦手で、例えばいくらキングが好きでも映画『スタンド・バイ・ミー』あたりは結構凡作じゃないかと思うような人間なのである。
また、ランズデールの筆致は突拍子もなく下品だったり残酷だったりする描写には真価を発揮するけれど、こういった文学臭を感じさせるような物語となるとその描写が幾分陳腐に感じてしまう。オレは惨たらしい死体は嫌いじゃないが.それを子どもが次々に目撃してしまう、というお話もちょっといただけない。
そんなわけでオレ的には評価の高くない物語なのだが、やっぱりKKKが出てきた時は燃えたね!あいつらが燃えた十字架を持ち、最悪なセンスと言っていいあの下らないとんがり帽子の白装束で現れた時には、「ああこいつらときた日にゃあホントに馬鹿で糞野郎連中なのだなあ!!」と心の底からワクワクした!ナチもいいがKKKもそのサイテーさではオレの心を鷲掴みだよな!だから今度は舞台はこのままでもいいからKKKとのおぞましい死闘の物語を描いて下さいランズデールさん!