『カールじいさんの空飛ぶ家』は爺さんが第二の人生を見つける映画だった

カールじいさんの空飛ぶ家 (監督:ピート・ドクター 2009年アメリカ映画)


カールじいさんの空飛ぶ家』、いつもハズレの無いPIXERアニメってことで期待して観に行ったんですよ。まず予告編が凄い良かったんですよ。妻と人生の苦楽を共にしてきた一つの家、しかしその妻も鬼籍に入り、一人になってしまったカール爺さんが思いついたのは、かつて妻と知り合った頃夢で語り合った空の向こうにある土地に、妻の思い出の詰まった家ごと旅立ってしまおう!ということだった…というものなんですけどね。

これが丁度映画のオープニングに当たる訳なんですが、この、若かりし頃から老年までの二人の道しるべがね、いいんですよ、泣かせるんですよ、二人で座ってたニ脚の椅子が、奥さんが亡くなって一脚がぽつりと空いてるんです、ここでもうオレ涙がドバーですよ。ああオレも愛する相方がいなくなったらどうしよう、いやでもオレのほうが年上だし相方さんがこんなふうに残されちゃうんだろうか、あいつ寂しがり屋だからきっと耐えられないだろうなあ、可哀想だよそんなの、とかいろんな事が頭に去来しちゃいましたよ。

でね、爺さんは家に風船山ほど繋げて飛び立つわけなんですが、オレ、これって死んだ奥さんにこれから会いに行く、ってことなんだと思ったんですよ。飛び立ったあとにはあの世の世界が待っているのだろうな、と思ったんですよ。つまり、本当は爺さんは、死んじゃったから空に飛び立って、そしてあれこれありながらやっと天国の奥さんに会えて、そこで永遠に一緒に居られるという話だと思ったんですね。ないしは、爺さんは生きたまま天国の奥さんに会ってそこで本当のお別れをして、それから地上に戻って奥さんの思い出を胸に一人生きる、そういう話だと思ってたんですよ。つまりね、爺さんの人生の郷愁についてのオハナシだと、勝手に決め付けてたんです。

そしたらアナタ、なんだか目的地の南米だかどこだかにはあっさり着いちゃうし、なんかその土地では変な鳥が現れて、それを喋る犬たちが追い掛け回してるし、爺さん、奥さんの思い出に浸る間もなく、なぜかくっついてきちゃったデブっちょのガキと一緒にドタバタするハメになっちゃうんですよ。挙句の果てに宮崎アニメみたいな空中戦にウツツを抜かすし、なんだか爺さん大活躍のアクション・ストーリーになるんですよ。

お陰で二人の思い出の椅子はブン投げちゃうし、奥さんの写真は放って置かれるし、なんだよ!女房との思い出はもういいのかよ!だいたい何の為にここまで来たんだよ!とオレはすっかり置いてけぼりですよ。まあ勝手にストーリーを決め付けてたオレも悪いんですけどね。結局、爺さんはデブっちょのガキと巡り合う事でこのガキの後ろ盾になるという新しい人生を手に入れるんです。これってオレの想像より全然前向きだしアメリカ的ですよね。考えてみるとオレの想像のほうはかなり湿っぽいし辛気臭いですよね。でもちょっとしんみりしたかったんですよ。そのせいで大好きなPIXERアニメなのにあんまりノレませんでした。すいません。