異なった知覚、異なった現実を生きざるを得ない少年少女たちの物語〜漫画『東京怪童』

■東京怪童(1) / 望月ミネタロウ

東京怪童(1) (モーニング KC)

東京怪童(1) (モーニング KC)

望月ミネタロウってあの望月峯太郎だよね?名前変えたんだ?と思いながら読んでみたんだが、これがこれまでの望月作品の中でもダントツな傑作になりそうな優れた作品世界を創造している。
脳に障害を持ち現実に対して人とは違った係わり合いしか出来ない様々な少年少女が主要人物となっているが、彼らの垣間見る一般人とは違う知覚世界や、それによって巻き起こる周囲との軋轢が描かれた物語である。『ゴーストワールド』『リトル・ミス・サンシャイン』『ナポレオン・ダイナマイト』など米インディペンデント・ムービーのキャラクター・イメージをそこここに配した実にマニアックなビジュアルが望月独特の頭抜けたセンスを感じさせるが、作品内容そのものもリリカルかつセンシティブなインディー・ムービーの味わいを持ち、その種の映画を観ているかのような錯覚にさえ捉えられる。そして望月の突出した画力はこれまで以上に洗練され、絵を眺めているだけでもその作品世界に引き込まれるだろう。
特に主人公の「事故による脳の損傷により何でも思ったことを口に出してしまう少年」のキャラが素晴らしい。怒りも軽蔑も欲望もそのまま口に出してしまう彼はそれにより何度も肉体的暴力の洗礼を浴びることになるが、その彼の痛々しいさま、常に剥き出しであることのヒリヒリとした心象が胸に迫るのだ。そしてそんな彼は怪物を主人公としたマンガ作品を描いているのだが…。まだ1巻目なので彼らのキャラクター紹介で殆どの紙数が尽きてしまうが、この先どう物語が動き出すのか実に楽しみな作品である。