焼〜け落ち〜た館の中に〜立つ影はぁ〜ミラーズ!ミラーズ!

■ミラーズ (監督:アレクサンドル・アジャ 2008年アメリカ映画)


タイトルは特撮TVシリーズ『ミラーマン』の主題歌の節で読んでもらいたい。…ってか今時誰も『ミラーマン』なんて知らんか。知ってても手鏡痴漢事件の植草教授のことだと思っておる人も多いかと思うが実はそうではないのである。この映画『ミラーズ』は「鏡を覗いたら映ってる自分が勝手に動いているよ!」というホラー映画である。その鏡の中には悪霊がいるらしく、鏡の向こうの自分が自らを傷つけると鏡の前の自分は自由を奪われたまま自分自身を傷つけ、しまいには死に至るのだ。そして火事で焼け爛れ廃墟となったデパートの守衛を始めた主人公がその鏡の呪いに取り付かれ、家族にも命の危険が迫るというお話である。廃墟の守衛というのもよく分からん仕事だが、多分夜中に近所のガキが入り込んで「廃墟ですよ!ユーレーいますよ!」などと2chで実況中継したりしないように雇われたのだろう。

しかしなんだな、「鏡の向こうには得体の知れないものが潜んでいる」といったテーマってなーんか今更な感じしないかなあ。鏡の向こうの光景がよく見ると現実とはちょっと違っているとかいう恐怖の盛り上げ方って、小ネタとして今までいろんなホラー映画で散々やられたことなんじゃないのかなあ。だから幾らこの映画で「鏡の向こうの鏡像が現実とは違ってますよ!?どうです怖いでしょ怖いでしょ!?」とかやられても白けるんだがなあ。元になったという韓国映画『Mirror 鏡の中』は観てないんだが、東洋系ホラーの持つ湿った恐怖感をリメイクの段階でうまく脚本に写し切ることが出来ずこんな凡庸な物語になっちゃったのかもしれんな。監督は『ハイテンション』『ヒルズ・ハブ・アイズ』のアレクサンドル・アジャだが、なーんか居心地悪そうにリメイクしていたような気がする。

ところが物語後半、鏡の中に悪霊を解き放ってしまった少女の正体を突き止めた主人公が、今はすっかり老婆になったその彼女に「おいババア!おめーのせいで家族が命の危機なんだよ!責任取れコラ!」と詰め寄るあたりからお話は乱調してくる。「いやもう随分昔の話だし私如きなんも出来ないですよ?」と拒むバーサンに拳銃突きつけ「るせー!廃墟来い廃墟!」と拉致ってくる主人公!老人なんかいたわってたまるものか!愛する家族の為なら棺おけに片足突っ込んだ赤の他人のババアの命なぞうまか棒より安い!10本買ったって100円+消費税だ!んなもんなんぼでも買ったる!とばかりに廃デパートの地下で繋がっている廃病院の鏡張りの部屋に婆さんを連れ込む主人公だ!そもそもこの鏡張り部屋でバーサンが少女の頃精神治療を受け、その時少女の中にいた悪霊が鏡の中に入ってしまったということなんだな!

「こんな鏡張りの部屋で私を椅子に縛り付けていったいどんなプレイを!?」とワクテカじゃなくて恐れ戦くバーサンに「グヘヘ、お前の中にもう一回悪霊を呼び戻せば全ては一件落着なんだよ!」と黒い笑みを浮かべてバーサンをねめつける主人公!「いやーんそんな変なもの入れないで!ワタシ壊れちゃう!」とバーサンが言ったかどうかは定かではないが、言ったとしても相手はバーサンだしあんまり嬉しくないことは確かだ!そしてお待ちかね、悪霊さん登場!主人公の目論み通りバーサンに憑依する!すると大変、なんとバーサン大爆発!?「やた!これで一件落着!」と小躍りする血も涙も老人をいたわる気持ちもない主人公の前に恐るべきものが姿を現す!ぬぁんとそれは、悪霊と合体することにより超人的な力を得た「スーパーヴァーさん(©アガサさん)」であった!?

そして超人ハルク状態になったスーパーヴァーさんと主人公との骨きしみ肉うなる力と力のぶつかり合いがこの後展開される!繰り出される強烈パンチ!風を切る殺人キック!投げ飛ばされ紙屑のように宙を舞う主人公!血反吐を吐き怒号を上げながら襲い掛かるスーパーヴァーさん!強力な戦いにより既にして壁は壊れ天上は崩れバラバラと落ちる瓦礫の中で戦いはまだ終わらない!さあ、地球最強の戦士はどっちだッ!?…って、そんなお話だったっけ?