闇の鶯 / 諸星大二郎

闇の鶯 (KCデラックス)

闇の鶯 (KCデラックス)

諸星大二郎の近作旧作を交えた単行本未収録短編集。タイトル作品の「闇の鶯」などは20年前に描かれた連作短篇なのらしい。妖怪ハンター稗田礼二郎が所々で顔を出すのが嬉しい。
「闇の鶯」は山の精霊と山を開発する為に乗り込んできた人間達との呪術的闘争を描いた物語。そのキーアイテムとして当時やっと世間に出回り始めたパーソナル・コンピューターが使われていて、諸星には珍しく精霊と人間がパソコンゲームで戦う場面があったりもする。しかしそこは機械を描くのが大の苦手の諸星、パソコンは描かれてるのにマウスが無かったりするところが微笑ましい。勿論物語はそれで終始する訳ではなく、山岳信仰や山を巡る伝承を織り込んだ諸星らしい伝奇作品となっている。
「それは時には少女となりて」は「闇の鶯」の"山の怪"に対する"海の怪"といったところか。「人魚の記憶」はゲーム「サイレン」とのコラボレーションで、「描き損じのある妖怪絵巻」は京極夏彦関連の書籍でのコラボだったらしい。「涸(か)れ川」は諸星お得意の、何処とも何時ともしれぬ荒野の土地で繰り広げられる幻想の物語。こういった異界ものはやっぱり諸星の独壇場だなあ。