赤壁の戦いはハンバーガー・ヒルだった!?

レッドクリフ Part II/未来への最終決戦 (監督:ジョン・ウー 2009年アメリカ・中国・日本・台湾・韓国合作映画)

■愛とか勇気とか未来とかの映画だって話だよ!

レッドクリフ Part II」である。「未来への最終決戦」である。「1800年の時を超えて愛と勇気の伝説ここに完結」なのである。大昔の中国の話なのに"未来"とか言われても困るし、"愛と勇気の伝説"なんて言ってるが「戦争やって人をなぶり殺しにしまくるのをみんなでギャハハと笑いながら観る映画に愛と勇気はカンケーねーだろ」とは思ったけれども、まあエエベツクスとかテレァサとかが絡んでいるらしく、こんなのにいちいち目くじら立ててると精神衛生上良くないので見なかったことにするしかないのである。しかし映画が始まると監督のウーちゃんの「世界不況を乗り越えよう」だったか「鳩には餌をあげよう」だったかいうメッセージが出てきて、ウーちゃんなんか変なクサでもやってんのか?などと余計な心配までしてしまう。

という訳で始まり始まり〜ということなんだが、前作は初っ端からの戦闘の連続がそこそこ楽しめた映画だったのに、このPart2では"最終決戦"まで間を持たせなきゃならないせいか、前半がなんだかユルユルなんである。一応"最終決戦"までの下準備と裏工作と諜報戦ということなんだろうが、血みどろハラワタまみれの殲滅戦がこれから始まるというのにどうも緊張感が足らないのだ。疫病死体を使ったバイオハザード作戦はなかなか非道でよかったけれども、もっと黄色い膿だの緑色の吐瀉物だのに塗れた、赤い死斑が浮かびまくりのグジャドロ死体を出してもらいたかったのに、これでは単なる食中毒患者ではないか…とか言っているオレはそもそも観る映画を間違っていたのだろうか。

■映画のメインテーマは「団子ドカ食い」

あとウザかったのがイイモンの軍の(注:フモさんはこの映画で誰と誰が戦っているのかを覚えることを放棄しています)誰だかの妹と誰だかの女房の(注:フモさんはこの映画で登場人物の名前を覚えることを放棄しています)大活躍である。ワルモンの軍に忍び込んでスパイをしていた誰だかの妹は、ワルモン軍の「サッカーが上手いだけが取り得の頭が弱く純朴そうな田舎のイモ兄ちゃん」と"心の交流"をしてしまうんだが、これはもう後に「田舎のイモ兄ちゃん」は誰だかの妹の目の前で惨たらしく血の海に沈んでいくというフラグがミエミエで、かなり白けたのである。誰だかの女房もクライマックスにワルモン軍に一人で乗り込むが、ワルモンの大将を色仕掛けでたらし込み、ハメ狂っているところを喉首掻っ切るのかとワクワクしながら観ていたら、「戦争ハンターイ!」などと今更それ言うのかよという間抜けな平和主義ぶりを披露し、こいつこれでも軍人の妻かッ!?と憤懣遣るかたないオレだったのである。

中盤で最も笑わせてくれたのはイイモンの軍が冬至だからってんでみんなで団子食うシーンだな。部隊全員広場で整列している中で団子が配られるんだが、部隊の連中がみんなでよってたかって大将に団子を一個づつ分けていくんだよ。一個師団全員が一個づつ大将に分けてったら最終的にどんだけの数になるんだ!?と固唾を呑んで画面に見入っちまったよ!しかし大将の皿に団子が次々に分けられるシーンはあるけど、画面切り替わると皿の団子は増えてない!あーこれは大将、途中でもしゃもしゃ食いながら団子を貰ってたわけだな、とオレは理解したが、それにしたってたいした量だよな!まさか「レッドクリフ」観に行って大食いチャンピオン見せられるとは思わなかったよ!まあきっと「腹が減っては戦は出来ぬ」ってことなんだろうな!その後の大将の活躍ぶり見ればそれも納得だ!

■とりあえずぶっ殺しとけ。戦争だし。

で、映画はやっと戦闘開始となり、あたり全てが火の海血の海瓦礫の山死体の山となった頃でやっと眠りかけていた(ってかちょっと寝た)オレの目も覚めてきて、「キャッホウ!燃やしつくし殺しつくし奪いつくしの三光作戦こそが殲滅戦の基本!やれやれやってしまえ!」などと例によって頭のおかしいことをほざきながら膝を乗り出したわけだ。いやもう雨あられと降り注ぐ数万の弓矢、炎に包まれ藻屑と化す数千隻の敵戦艦、迫撃砲のように炸裂しあたりを燃やしつくす火の玉、重戦車のように鉄の盾で完全防御しながら突き進む兵隊たち、憤怒に燃えたイイモンの軍の獅子奮迅の白兵戦、その中でワルモン軍はB29による絨毯爆撃を受けたかのように全てを嘗め尽くす業火の中に沈んでゆくのである。この阿鼻叫喚の戦闘シーンが第2次大戦・ベトナム戦争映画に通じる殺戮のカタルシスに溢れていて楽しかった。…で、ええと、こいつらなんで戦ってたんだっけ?

前作「レッドクリフ Part1」レビュー

■映画『レッドクリフ PartII/未来への最終決戦』予告編