エドガー・ライト伝説のTVシリーズ『SPACED/俺たちルームシェアリング』!


ホット・ファズ』『ショーン・オブ・ザ・デッド』を世に送り出したエドガー・ライト製作のTVドラマ、『SPACED/俺たちルームシェアリング』を観終わりましたよ。この『SPACED』、1999年と2001年に2シーズン全14話が製作され、当時からカルト的な人気を誇っていたんだそうです。主演はあのサイモン・ペグで、もともとこのドラマは彼の原案でもあったらしい。

お話は、とある事情からカップルでもなんでもないのに一つの部屋をシェアして住むことになった二人の男女、ティム(サイモン・ペッグ)とデイジー(ジェシカ・スティーヴンソン)、そして二人を巡るおかしな友人たちや怪しい管理人が織り成すドタバタ・コメディ。1話25分程度という短さが逆にシンプルでとてもいいテンポを生み出しています。

相手のことをあんまりよく知らない男女が一つ屋根の下で…というシチュエーションから想像しちゃうような色っぽい要素が全くと言っていいほど無い、というのがまずいいですね。ティムもデイジーも相手のことをまるで異性とみなしておらず、むしろお互い勝手に好きなことをやっている。かと言って無視しているわけでも意識し過ぎているわけでもない。二人と絡む友人達も合わせ、これはつまり体の大きな子供たちの話ということなんでしょうね。

ティムはスター・ウォーズ・オタクでイラストレーター志望、色気の欠片も無いデイジーはライター志望、友人たちはというと芸術家の卵だったり軍オタだったりするわけですが、これってひとつのボヘミアなコミュニティなんですね。そしてその中で自分の趣味に没頭してみたり、自分の夢と格闘したりしているわけです。その自由なような怠惰なような、現実から3センチぐらい浮かんでいるようなふわふわした日常。そんなモラトリアムな猶予期間をグダグダと謳歌するオトナコドモたちの生活振りをスケッチしたのがこのドラマなんです。

なんといってもこのドラマの見所は『ホット・ファズ』や『ショーン・オブ・ザ・デッド』にも通するリズミカルでテンポのいい編集、そこから生み出される畳み掛けるようなギャグ・センスでしょう。そして映画やポップ・カルチャーネタを基にした膨大な量の細かなくすぐりが矢継ぎ早に繰り出され、「このシチュエーションでこのネタ持ってくるのか!」と観ていて終始ニンマリさせられるんです。

ティムたちは時々妄想が暴走し、あたかも映画のヒーローにでもなったかのような芝居気たっぷりの行動をとり始めます(まあ、これ自体がドラマなんですが)。それを観ているこっちのほうは「お前ら映画の観過ぎだ!」と画面に突っ込みを入れながらゲラゲラ笑っているんですが、その本心は「うわー!おもしれー!オレもやりてー!」なんですよね。このナリキリぶりの馬鹿馬鹿しさと茶目っ気が、実は同じように"映画の観すぎ"なこちらにとっても、なんだか"分かっちゃう"こそばゆさと楽しさを与えてくれるのが嬉しいドラマでした。

どのエピソードも面白かったですが、シリーズ1の「エピソード5/拉致られて…犬」は犬の失踪がとんでもない大作戦へと発展する暴走振りがとても可笑しかったし、シリーズ中の最高傑作であろうシリーズ2「エピソード5/俺たちガンファイター」は「その展開は予想外だった!」と文字通り転げまわって大爆笑した作品でした。ああ…今思い出しても笑いがこみ上げる…。

◆シリーズ1

エピソード1/BEGINNINGS 偽装カップル
エピソード2/GATHERINGS ぐだぐだ☆パーティ
エピソード3/ART ゾンビパニック
エピソード4/BATTLES 愛と復讐のサバゲー
エピソード5/CHAOS 拉致られて…犬
エピソード6/EPIPHANIES GO!GO!クラブ
エピソード7/ENDS さよならルームシェアリング

◆シリーズ2

エピソード1/BACK リターン・オブ・デイジー
エピソード2/CHANGE 底抜け金欠生活
エピソード3/METTLE 男だらけのラジコンバトル
エピソード4/HELP 原稿奪還大作戦
エピソード5/GONE 俺たちガンファイター
エピソード6/DISSOLUTION 地獄のバースデイ
エピソード7/LEAVES 永遠のルームシェアリング