ゲイ・ミュージックへの招待

■オレとホモ疑惑

昔オレが好んで聴いていた音楽の殆どがゲイの人がやっている音楽であったことに気付き、「ひょっとしてゲイの人のやる音楽の好きなオレもゲイなのではないか」と思った事がある。そして自分がゲイの人のようにナイーブで感受性が豊かで美意識に溢れ、機知に富みヒップでキャンプでボヘミアでアーティスティックな人間であるのかもしれない、と勘違いしかけていたのである。

しかし問題は、ゲイの人のように男が好きであるのか?という最重要項目のクリアである。う〜ん、確かに美形な男の友人のAとかBとかなら寝てもいいかもなあ…と考え始め、さらに非モテの人生を数十年続けていたオレは、「まあこの際男でもいいかな」となんとなく思えてきたのである。…と、そこまで考えて、いやいや、それはホントにいいのかよッ!?と自分の中で慌ててその考えを否定したものである。

ただ、コーラの瓶みたいな体型にサイズの合ってないパッツンパッツンの服を着て、何を考えているんだか分からない表情で淫靡に目つきをギラギラさせながら、「ぬふふ…」とか「ぐふふ…」とかいう嫌らしい含み笑いをいつも漏らすのを得意としていたオレにホモ疑惑が湧いたことも事実である。しかし会社女子の皆さんにその疑惑の真偽を問うてみたところ、冷ややかに「あなたは単なるセクハラスケベオヤジ」というお墨付きを貰い、晴れて疑惑は払拭されたという訳である。よかったよかった。…って喜ぶことなのか!?

■ゲイ・ミュージックへの招待

というわけでオレのよく聴いていたゲイな人たちの音楽を紹介。ちなみにあくまで紹介するのは”オレの聴いていた”であって、このへんの音楽を全て網羅するものではない。だからフレディー・マーキュリーとかは入っていなかったりするのな。

デヴィッド・ボウイ
オレが10代の頃からファンであったデヴィッド・ボウイ。彼はゲイではなくバイセクシャルだったが、やはりその美しい風貌は男のオレも見とれるものがあるなあ…。そういえば高校生の頃、ボウイを聴いていたオレを級友は「お前ホモの音楽聴いてんのか?」とからかったが、レコードを貸して聴かせると「…いや、音楽は確かにいいよな」などと決まり悪そうに肯定したものであった。
David Bowie - Life On Mars?

ロキシー・ミュージック
これも10代から好きだったバンド。ロキシーもゲイではない。むしろブライアン・フェリーは「骨の髄まで女好きのドスケベ」であると思う。しかしデビュー当時のグラムなルックスや、ビジュアルコンセプトのセンス、そしてどこまでもヘニョヘニョと芯の無い腰砕けの音楽スタイルは、男の力みが全く無いといった点で極めてゲイに通じるモノがあると思う。
Roxy Music - Remake / Remodel Live 1972

ペット・ショップ・ボーイズ
やはりオレに一番強烈にゲイミュージックの凄さを意識させたのはこのPSBだろう。ディスコミュージックを題材としながらここまで官能的で美しいサウンドを実現したのは彼らの美意識と音楽的知性によるものだ。そしてその官能の陰にどこかしら哀感が付きまとっているのだ。官能や刹那主義と裏腹の虚無感を顕にしているという点で、他のゲイミュージックよりも一歩も二歩も抜きん出たものがある。その辺も批評的な音楽を作り上げてきた彼らの才能によるものだと思う。だからこそここまでの長きに渡りキャリアを積み重ね、それを不動のものとしているのだ。デビューから現在まで今でもずっと聴き続けている数少ないバンドの一つである。
Pet Shop Boys - Where The Streets Have No Name

【ブロンスキー・ビート】
デビュー当初からゲイとして生きることの悲しみや喜び、そして差別への憤りを歌い続けてきたジミー・ソマーヴィルの在籍していたバンド。なにしろそのファルセット・ヴォイスが素晴らしい。なんかこう、包まれてしまうそうな気持ちよさが…うううヤヴァイ…。やはりゲイの人は”男の気持ちいいツボ”を心得てるなあ、と、なんとなく思ったものである。そして、疎外される悲しみ、というのは別にゲイじゃなくても誰でもこの社会で体験することだ。彼の訴えはゲイだけのものではなく、普遍的なものなのだ。このクリップ「Why?」のサビで歌われる「君と僕は一緒 僕らの愛の為に戦おう」という歌詞は単なるラブソングには無い凄まじい決意がこもっていて、今聴いても背筋に来るものがある。
●Bronski Beat - Why?

【ブロンスキー・ビート&マーク・アーモンド】
さきのブロンスキー・ビートと元ソフトセルのマーク・アーモンドが合体して作られたシングル、ドナ・サマーのカヴァー「I Feel Love」。もうお二人が目をぎらつかせながらクネクネして歌い上げています。特にヌメヌメとしたマーク・アーモンド兄さんの魔性の色香には逆らいようがありません。怖いです。蛇に睨まれたカエル状態です。なにしろ異様なテンションで唄われるディスコ・ナンバー。
●bronski beat + marc almond - I Feel Love

【コミュナーズ】
そのジミー・ソマーヴィルがブロンスキー・ビート脱退後に結成したユニット。ここではゲイであることの喜びが高らかに歌い上げられ、非常に伸び伸びとしたサウンドが展開される。なんか腹立つぐらい楽しそうに歌ってません?
●The Communards - Never Can Say Goodbye

フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド
もうひとつ、ハードゲイ路線のルックスでギラギラとファンク/ディスコサウンドを展開していたFGTH。あからさまにセックスを歌いセンセーショナルなデビューを果たした彼らのシングル『リラックス』は大いに話題になりましたねえ。実を言うとオレはシングルでは『トゥー・トライブス』のほうが好きであれ1000回くらい聴いてるかもなあ。
Frankie Goes to Hollywood - Relax

カルチャー・クラブ
艶やかな女装で注目を浴びたボーイ・ジョージの在籍していたバンド、カルチャー・クラブ。当時はとても人気がありましたね。ソウル・ミュージックを上手にかっぱらうセンスは卓越したものがあったとは思うが、それほど思い入れのあるバンドというほどでもなかった。でもこの『Time』は好きだったなあ。
Culture Club - time [ clock of the heart ]

【イレイジャー】
ヴィンス・クラークがデペッシュ・モード、ヤズーを経て結成したユニット。Voのアンディ・ベルのキャンプなゲイぶり、女装して楽しそうに踊る姿をお楽しみください。
●Erasure - Take A Chance On Me

デッド・オア・アライブ
80年代の有名プロデューサーチーム、ストック/エイトキン/ウォーターマンの匂いがプンプンするDOAの単調なディスコサウンドはそれほど好きではありませんでしたが、あの時代のダンスミュージック/ハイエナジーサウンドを一番分かりやすく体現したバンドでもあるんですよね。
Dead or Alive - You Spin Me Round (Like a Record)

【ディバイン】
ディバインも実はゲイではなかったという話ですが、でっぷり太った巨漢のドラッグクイーンというビジュアルは何しろ凄かった。そしてこの声、この歌詞!
●Divine - I'm So Beautiful

※今回の構成はゲイ・ミュージックの総合サイト《Queer Music Experience.》を参考にさせていただきました。ゲイ・ミュージックに興味のある方は是非訪れてみてください。