落下の王国 (監督:ターセム 2006年アメリカ/イギリス/インド映画)


腕を骨折して入院中の5歳の少女アレクサンドリア(カティンカ・ウンタルー)は、やはり怪我で入院中のスタントマン、ロイ・ウォーカー(リー・ペイス)と知り合う。ロイはアレクサンドリアに御伽噺を語って聞かせ始めるが、それには理由があった。

少女に聞かす物語がファンタジックに画面に踊る。美しい映画ではある。しかし最初は「おー」とか驚きながら観ていても中盤から飽きてくるんだよなー。結局綺麗なだけで毒の無い映像というのは飽きるもんなのよ。物語も後半になってくるといい加減コケ脅かしにも慣れて来るから、そろそろ退屈してくる。風光明媚なロケハンとそこで繰り広げられる復讐と冒険の物語、ということなんだけれど、段々「世界中の観光地や世界遺産を背景にしてコスプレショウをやってみました!」って映画なんじゃねーのかコレ?と思い始める。で、これってなんかに似てるなーとあれこれ考えてたら思い出したのは、世界中を周って自分の半ケツ写真撮ってそれをホームページにUPしてたヤツな。写真だけならそれは観光風景にしかならないが、半ケツという強烈なテーマを加味することで統一感を与えるという深淵かつ低脳なホームページだったんじゃなかったかな!?

少女に物語を聞かせる青年、という構図はルイス・キャロルとアリス・リデルの関係を思い浮かべるが、この映画はそういうロリーな展開は無い。映画を観る人間がアレクサンドリアに萌えない限りではあるが。だから主人公の男はなんでこんなに熱心に御伽噺を少女に話して聞かせてるんだ?と不思議に思いながら観ているとそのうち理由が明らかになっちゃったりするんだが、その理由というのがどーも説得力不足っちゅーか、それだけの理由からこんだけの話を紡いで引っ張るのか?と思えちゃう。現実世界の様相が幻想世界に影を投げかける物語としては『パンズ・ラビリンス』なんかを思い出したが、この物語はそんな深刻なもんではない、というか、主人公が無理して深刻ぶってるだけのようにさえ感じるんだが。あと個人的には5歳のアレクサンドリアたんがなーんか可愛くなくて、こいつが御伽噺に介入しはじめてからどんどんグジャグジャしたお話になっていくのが気に食わなかった。

さて監督のターセム(なんか煙草みたいな名前だな…ってあれはセーラムか)は前作『セル』でも現代美術のおいしい所をあれこれ拝借して現代美術大好きっ子の勇名を轟かせたが、今回もグレゴリー・コルベールの写真を思わせる象の遊泳シーンから始まってブラザーズ・クエイを髣髴させるダークな人形芝居で盛り上げるという楽しい芸当を披露しておった。他の方の感想なんかを読んだら象のシーンと人形のシーンがよかった!なんて言っていたけど、それってどうなんだろなあう〜ん。アーティスティックな映像の映画を観たいというのであれば、セルゲイ・パラジャーノフあたりを御覧になると良いかと思います。ま、オレは観始めて30分で必ず寝ちまうがな!

■「落下の王国」予告