「俺たちダンクシューター」公開記念!アホアホ・コメディ映画10連発!その3・「マッド・ファット・ワイフ」「デュース・ビガロウ、激安ジゴロ!?」

■マッド・ファット・ワイフ (監督:ブライアン・ロビンス 2007年アメリカ映画)

人気の盛りは過ぎたけれども、エディ・マーフィーというのは結構好きな俳優だ。この「マッド・ファット・ワイフ」は、大ヒットした「ドリームガールズ」の後に彼が主演したコメディだが、なぜか日本では未公開だった。お話は、子供の頃中国人のウォンに拾われた、地味でダサくて気の弱い男ノービットが、巨漢で極悪な性格の妻ラスプーシアの尻に引かれ悲惨な人生を過ごしているところに、幼馴染の娘が現れて…というもの。ここで登場する中国人ウォン、主人公ノービット、悪妻ラスプーシアを、エディ・マーフィーが一人三役務めるところが観どころか。
なにしろこの、特殊メイクを駆使した一人三役が凄い。中国人ウォンはまあ同性だから何とかなるような気がするが、妻ラスプーシアはカバみたいな丸々と太った女で、さらにマウンテンゴリラみたいな怖い顔。これが恐怖を誘うビキニ姿になったりするから大変だ。勿論特殊メイクだけでなく、煮ても焼いても食えない嫌な女を生き生きと(?)演じるエディ・マーフィーの演技力も相当のものがある。観てて「こういうオバサンってホントにいそうだなあ」と思えたぐらいだ。
逆に、本当の女性に”最低の女”を演じさせずエディ・マーフィー自らがその役を買って出たところに、厭味の無いギャグが生きてきた要素があると思う。主人公ノービット自身もエディ・マーフィーとは思えないアフロで眼鏡で痩せっぽちの冴えない男で、このノービットの情けなさもまた味わいがあるのだ。
物語のほうは下品なだけのドタバタコメディだと思っていたが、そういった部分はあるにせよ、中国人、黒人、イタリア人など、移民や有色人種たちのコミュニティの中での人情噺であり、定石ともいえるドラマツルギーはお約束通りではあるけれど、しっかり笑わせ心和ませホロリとさせる。なんだかその作りは、日本の松竹新喜劇あたりの、古臭いが大衆的な笑いとペーソスのある物語を思い出してしまった。意外と良作でしたよ。

■デュース・ビガロウ、激安ジゴロ!? (監督:マイク・ミッチェル 1999年アメリカ映画)

デュース・ビガロウ、激安ジゴロ!? [DVD]

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ロブ・シュナイダー主演、アダム・サンドラー総指揮で製作されたドタバタコメディ。主人公デュース・ビガロウ(ロブ・シュナイダー)は熱帯魚オタクの水槽清掃員。ある日彼は金満ジゴロのゴージャスな熱帯魚水槽を壊してしまうが弁償する金なんか無い。そこでこっそりジゴロの仕事を引き受けるが…というもの。
「激安ジゴロ」なんてタイトルからどんだけエロエロでお下劣で安い内容の映画なのかと思いきや、これがかなりのお笑い名作なのでびっくり。勿論シモネタ中心のしょーもないお笑いも頻繁に飛び交うにせよ、それだけの映画では決して無いのだ。ナイショでジゴロを引き受けるデュース・ビガロウは、やってきた女性とお手軽エッチをする訳ではなく、ジゴロでも買わなければ男性と出会うことがなかなか出来ない彼女たちの、胸の中に仕舞われたいろんなコンプレックスや悩みを聞いてあげて、結果的に彼女たちを癒してしまうのである。
そんな彼女たちは性格やルックスに難のある、ある意味極端に個性的な女性ばかりなのだが、「自分は負け犬でしかない」と思い悩む彼女たちに、デュースのアホアホだが楽天的で優しい性格が救いとなってしまうのだ。観ていて最初は個性的過ぎる女性たちをちょっと笑ってしまうが、彼女らの悩みを聞いていると観ているこっちまでなぜだかほだされてしまう。
デュースは決して善人ぶっているわけではなく、自分にも同じように世の中への居心地の悪さがあるからこそ、彼女らの悩みを真摯に聞くことが出来たのだろう。バカもシモネタもきちんとありつつ最期は何故か心温かくなる傑作。レンタル屋で見かけたら是非手にとって見てください。