スターシップ・トゥルーパーズ3 (監督:エド・ニューマイヤー 2008年アメリカ映画)

■宇宙の戦士!

漢(おとこ)には観なければならない映画がある。ポール・バーホーベンのお笑いSF映画、「スターシップ・トゥルーパーズ」はそんな映画の一本である。手足もぎ取れ血飛沫臓物飛び散りまくるスプラッタ満載の戦闘シーンに、「戦争の大好きなアメリカ人って、ホンットに頭カラッポのクルクルパーな連中ですよねえ」という嘲笑と罵声を織り込み、なおかつSF映画としてもスリリングかつ完成度が高いという、「後方伸身2回宙返り2回ひねり下り」みたいなウルトラCを可能にした映画、それが「スターシップ・トゥルーパーズ」なのである。
しかし、その続篇「スターシップ・トゥルーパーズ2」は、あまりにもカスな映画であった。カスだカスだカスだお前のカーチャンデーベーソ、と何遍言っても足りないぐらいカスな映画であった。そのカス度の高さは、「カスであることは憶えているがストーリーが全く記憶に残っていない」という凄まじいものであった。あまりにもカス過ぎて、脳が記憶することを拒んだのである。

■3作目!

そして。期待と不安を一身に背負い、遂に「スターシップ・トゥルーパー3」の始動である!なんでも巷では「一作目の正式な続篇」とか言ってるじゃないか!?「ジョニー・リコ中佐が再登場」とかいう話じゃないか!?さらに「遂に原作「宇宙の戦士」にあったパワード・スーツが登場!」とか言ってるではないか!!これを観ないで何を観るんだ!?いや「崖の上のポニョ」は面白かったけどさ!?でも取り合えずポニョよりバグズだろッ!?パワード・スーツの活躍観ないで暑い夏越せるかっちゅうんだよッ!?
という訳で怒髪天を突くかのごとき逆上振りもあからさまに、「スターシップ・トゥルーパーズ3」公開初日の第1回目を、「漢(おとこ)の、漢(おとこ)による、漢(おとこ)の為の映画館」、銀座シネパトスへ観に行ったんだよッ!ってか漢(おとこ)漢(おとこ)うるさいんだよッ!(意味も無く逆ギレ)以下ネタバレありまくりに付き注意!

■バグズを殺れ!

ええと、最初に言っちゃうと、不安要素は山ほどあったにもかかわらず、なかなか健闘していたと思う。低予算であったことは画面を見れば分かるし、時々「ここで派手なシーンがあればなあ」と悔しくなる部分もあるが、見せるべきところはきちんと押さえて見せていたと思う。さらに、一作目の皮肉や冷笑に満ちたテイストも実に堅実に守っており、「正当な続篇」の看板に偽りなし、と判断して差し支えない。ただどうしても一作目は「超B級SF映画」であったのに対し、この「3」は「普通にB級なSF映画」のレベルを超えてはいないが。
それは脚本の説明不足やキャラ設定と舞台設定の曖昧さ、無用なシークエンスのダダ漏れによる進行のもたつき、SF的な映像作りの甘さ、などなどを挙げることができるが、あのカス過ぎる「2」(しかもストーリーが思い出せない)の後にこれを観てしまうと、「まあ頑張ったじゃないか」と擁護してしまいたくなるのが心情というものなのである。しかも、この「3」では、「1」には無い要素を盛り込もうとした工夫が見られ、それはそれで評価のポイントとなるのである。
その要素とは勿論パワード・スーツ(映画ではマローダーと呼ばれる)であり、そして「1」で皮肉の槍玉に挙がっていた軍国主義に加える事の、”戦争を正当化するための宗教の導入”への皮肉である。
物語中盤から、信教の大切さ、神を信じることの重要さを訴える登場人物が現れはじめ、「はん?監督ってキリスト教原理主義者かなんかなのか?」と少々シラケさせられそうになるのであるが、これが実は、物語ラストへの伏線だったのである。この映画を「宗教映画」と言った人がいたが、それは読みが甘すぎるというもの。

■マローダー登場!

それは、クラマックスにおいて、神なぞ全く信じていなかった登場人物が命の危機に対面して趣旨替えし、「天にまします我等の神よ、お助けください」と願いをかけた所でマローダーの編隊が空から降りてくる部分を観れば分かると思うんだが、ここ、ホントは爆笑するところだろ?これって「祈りはきっと神のもとへ届く」という意味なんかじゃなくて、神に祈って現れたのが「バグズを皆殺しにしちまおうぜ!」と盛り上がりまくっている血に飢えた海兵隊員だった、というところがひとつの皮肉になっているんだよ!
そして現れたマローダー軍団!いよッ!待ってましたッ!真打登場!もうなにしろこのマローダー軍団が無敵なのッ!しかも登場の仕方がナウシカ巨神兵エヴァの量産機か、ちゅうぐらい禍々しいのッ!もう地獄の番犬状態っすよッ!?戦争の神、破壊の権化として登場するんですよッ!?なんかデザインがウルトラセブンのキングジョーにちょっと似ているのは御愛嬌ですけどッ!?
とまたもや興奮気味に語ってしまうオレだが、勿体無いことに、このマローダー登場はホントのクライマックスだけなのね。メッチャカッコよかったけどね。という訳で、このマローダーが大活躍する「4」の製作をお願いしますよ!待ってますよ!絶対また観るからッ!

Starship Troopers 3 Japanese Trailer

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