オレとサイエンス・フィクション!(全5回・その3)

■日本SFだった!

小松左京の『復活の日』は相当衝撃的でしたね。風邪で人類が滅亡してしまう(実は風邪に隠れたウィルス兵器)というスケールの大きさと突拍子も無さ、バクテリオファージ云々といったウィルスの科学的説明、ページを繰るほどに死と滅亡の運命が迫り来る恐るべき展開、そして人類最後の生き残りである南極観測隊員たちを待つ過酷で胸を打つ運命。SFというものに目覚めたのはまさにこの作品からだったと言っていいでしょう。その後も『果てしなき流れの果てに』といった長編をはじめとする小松SFにのめり込みました。
もうひとつは光瀬龍。最初に読んだのが恐ろしく分厚い長編作『喪われた都市の記録』です。太陽系の各惑星基地に巻き起こるカタストロフの描写、気の遠くなるような時を隔てて姿を現す”喪われた都市”の記憶、そして悠久の宇宙の時の中では全ては滅びそして喪われてゆくのだ、という光瀬一流の無常観。酔いました。それから長編『たそがれに還る』や宇宙年代記シリーズを貪り読みました(何故か『百億の昼と千億の夜』はちゃんと読まなかった)。ある意味小松よりもはまった作家だったかもしれません。
そして筒井康隆。10代のSFファンは誰もが通る道筋でしょう。筒井は様々なスタイルの傑作作品がありますが、SFとして好きだったのは地球滅亡SF『幻想の未来』、『霊長類南へ』です。そのスラップスティック趣味で好きだったのは『脱走と追跡のサンバ』、『乱調文学大辞典』あたりです。
平井和正も相当はまりましたね。『サイボーグブルース』や『死霊狩り』もよかったですが、SFかどうかは別としても、やはりウルフガイシリーズでしょう。あれも10代のSFファンは一度は通る道なのかなあ。
ところが何故か星新一だけは一冊だけ読んだきりであまり興味が沸きませんでしたね。あと当時は山田正紀かんべむさしがデビューしたての頃で、これらもよく読んでいたように記憶しています。

復活の日 (ハルキ文庫)

復活の日 (ハルキ文庫)

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

喪われた都市の記録〈上〉 (ハルキ文庫)

喪われた都市の記録〈上〉 (ハルキ文庫)

幻想の未来 (角川文庫 緑 305-1)

幻想の未来 (角川文庫 緑 305-1)

霊長類 南へ (角川文庫)

霊長類 南へ (角川文庫)

乱調文学大辞典 (角川文庫)

乱調文学大辞典 (角川文庫)

■世界SF全集だった!

それと前後して図書館で発見したのが早川書房の《世界SF全集》全35巻でした。凄いですよ。世界のSFが全35巻の中に網羅されているわけですよ。もうね。陶然としましたね。その棚一つ持って帰りたかったですね。棚の前でひとつひとつ全ての巻を引っ張り出しては、この中にはどんな物語が書かれているのだろう、と想像するだけでうっとりしていましたね。35巻の内容をリンクで貼っておきますが、凄まじいラインナップですよ。欧米、東欧、日本の古典から当時の最新作まで、長編短篇が余すところ無く収録されているんです。
例えば18巻はベスターの『虎よ、虎よ!』とディックの『宇宙の眼』が同時収録されているんですよ!さらに23巻はレムの『ソラリスの陽のもとに』と『砂漠の惑星』が一つの本に収まっている!もうこの全集があればSFの歴史は殆ど抑えたといっても過言ではないし、また、全集のラインナップを目安に現在書店で手に入る作品を集めていく、というのもSF作品を知る道しるべになると思いますよ。
ちなみにこの全集は当時まだ書店でも手に入ったので、何冊か購入して今でも手元にあります。”ベスター・ディック篇”の18巻はオレにとってバイブルなので実家から東京に持ってきてあります。奥付を見ると1970年7月20日初版の初版本。定価は970円。こ、これってひょっとしたらお宝本なのか!?
◎世界SF全集 http://homepage1.nifty.com/ta/haya/zen_sf.htm


(つづく)