オレとサイエンス・フィクション!(全5回・その1)

■えすえふだった!

いつぞや雪狼さんからリクエストがあった、SFへの思いの丈を今回語りまくってみようかと思います。最初に書くと、20代まではSFって結構読んでたんですが、その後リタイアしていた空白期間があるんですね。「世の中にはSF小説以外の面白い読み物が沢山ある。これからはいろんなものも読んでみなきゃダメだ」と思ったんですね。あと、SFって、青春の文学だという気がして、いつまでもこればっかりじゃな、という気もしていました。
それがここ最近また読むようになったのは、はてなダイアリーを始めて、SF小説を読んでいる方が結構おられるのを発見し、さらに若い方が、オレが昔読んでいたSF小説を見つけ、楽しそうに読んでいるのをみて、なんだか懐かしくなってしまった、というのがありますね。だから、今この歳でまたSFを読み始めたのは、はてなダイアリーのお陰もあるんですよ。全5回ということで、またダラダラと長いんですが、宜しくお付き合いください。
なお、この歳まで接したSF関係のものを全て挙げてもきりがないので、幼少時から20代ぐらいまでに接したSF関連物を中心に、思い出話みたいな感じで書いてみたいと思います。

■SFマンガだった!

最初に触れたSFって、なにしろ手塚治虫のマンガだったんですよ。それは少年キング連載中だった『ノーマン』(1968年4月〜12月まで連載)。《遠い昔月には人類が住んでいて、侵略宇宙人との戦闘を繰り広げていた。主人公は現代の地球からタイムリープしてきた少年。彼は様々な特殊能力を持つ異星人の仲間達と一緒に侵略宇宙人軍団を撃滅する為立ち上がる》といった内容です。なにしろ溢れかえるSFアイディアの数々に魅了されました。ワープ航法なんて言葉を知ったのもこのときです。そして、ラストに用意された悲痛極まりない愛するものの死!子供心に、納得いかなくて、読み返したら結末が変わってるんじゃないのかと思い、何度もそのページを行ったり来たりして読んでいたのをおぼえています。あれは本当に悲しかったなあ。”物語”というものからトラウマを受けるという初めての体験だったんじゃないでしょうか。
もう一つは同じく手塚治虫の『ザ・クレーター』。SFやホラータッチの今で言う”奇妙な味”をした1話完結の短篇集ですが、これが手塚治虫の”裏面”を見せる実にダークでペシミズムに溢れる作品が多く、幼少時のオレは「物語というものの持つ深淵」を垣間見たような衝撃を受けたものです。手塚短篇には傑作中の傑作が多く、他にも『タイガーブックス』『ライオンブックス』などもメッチャお薦めです。絶対面白いから読みなさい。読め。
手塚と並んで非常に好きだったのが石ノ森章太郎(当時は石森章太郎)でした。『サイボーグ009』や『仮面ライダー』などのヒーローもので知られる石ノ森ですが、当時オレがはまったのは『リュウの道』という長編です。恒星間飛行から帰ってきた主人公の見たものは、核戦争で破滅した文明と退行した人類、異形の生物とミュータントたちだった…という物語なんですが、『猿の惑星』『タイムマシン』『トリフィドの日』『2001年宇宙の旅』など様々なSF映画へのオマージュに満ちた作品で、映画ビジュアルを上手く作品に生かしたSF愛に溢れる漫画でした(まあパクリといえないこともないが!)。

ノーマン(1) (手塚治虫漫画全集)

ノーマン(1) (手塚治虫漫画全集)

ザ・クレーター(1) (手塚治虫漫画全集)

ザ・クレーター(1) (手塚治虫漫画全集)

タイガーブックス(1) (手塚治虫漫画全集)

タイガーブックス(1) (手塚治虫漫画全集)

ジュブナイルだった!

小学校低学年の頃親に買ってもらったSFジュブナイル作品も忘れられないですね。タイトルは『恐竜三億年』というタイムトラベルものと、確か『タイムパトロール』とかいうタイトルの作品でした。後者はポール・アンダースンの同名長編の関係あったのかどうかは分かりません。そしてもう1冊は福島正実・著『地底怪獣マントラ』。そう、あのSFマガジン初代編集長の書いたジュブナイルだったんですよ。もうねー、小学校1,2年でSFマガジンの魔の手が迫ってたんですねー。この『地底怪獣マントラ』、ウルトラマンの怪獣物みたいな作品では全く無く、宇宙線の影響で地底から甦ったダイヤモンドより硬い触手を持った巨大な化物が地球を壊滅寸前まで追い込むという作品で、正直とても怖かったですね。この3作は何度も繰り返し読みました。
その後小学3年の頃に買った子供向けSF短篇集には様々な作家の短篇が収められていましたが、その中で一篇、異様な作品がありました。自分が侵略異星人が人間に成りすました”にせもの”であると疑いをかけられ政府に追われる男の恐怖を描いた『にせもの』という短篇でした。冷徹なラストには驚愕させられました。そしてこの作品こそ、その後これこそがSFだ、と大ファンになったフィリップ・K・ディックのものだったんですね。いやー、小学校低学年でSFマガジン編集長とディックの作品を読んでいたオレの人生は、既にSFへのレールが敷かれていたようなものですよねえ。

(つづく)