どこだか分かんないがどこまでも晴天なんだよッ! 《フモの惑星・その4》

(音声記録:第1回目)

あっあー。テステス。取り合えず記録しておく。これでもチンピラブロガーの端くれだからな。なんでもネタにしてしまうのは悲しいサガってやつだ。最初に言うと、辿り着かなかった。地球に。いったいどこなんだここ?生き物とか全然いないし。訳わかんねーよ。話が違うっつーの。来た時とおんなじぐらいあっと言う間に帰れるって言ったじゃねーかよ、あの鶏星人。
あ、鶏星人っていうのは、オレをさらって行ったゴリン星人のことね。あいつら鶏とそっくりなのよ。首をヘコヘコ動かすところとかさ。まあ背丈はあるから鶏というよりは、セサミストリートの、なんだっけ、あの黄色くてデカイ喋る鳥。アレみたいだけどね。まあそんなことはどうでもいいんだよ。あいつらの言った通りやったはずなんだけどなあ。なんでこうなっちゃうんだよ。人っ子一人いない謎の惑星で一人ぼっちだよ。太平洋一人ぼっちどころじゃねーよ。銀河系一人ぼっちだよ。
おまけに奴等に渡されたこの機械…あ、今声吹き込んでる機械ね、イマイチ使い方分かんないんで、これで助けを呼べるかどうかはっきりしないんだよ。だいたいゴリン星にいた時「何か必要なものあるか?」と訊かれて「日記書く機械」って答えたオレってバカだよなあ…。宇宙の果てまで行って、まずやんなきゃ、と思ったのが日記の更新だもんなあ…。どんだけ日記好きなんだよ…。

(音声記録:第2回目)

さっきから歩いてるけどね。岩場ばっか。まあ歩いたってどこかに辿り着けるって訳じゃないんだけどさ。あて無いし。地図無いし。まあ地図があったって地図読むの苦手なオレじゃあやっぱりどこにも辿り着けないだろうがな!気温は暑くも無く寒くも無く。空は快晴だよ。腹立つぐらい晴れやがってるよ。どこだか分かんないがどこまでも晴天なんだよッ!
バッカヤローーッ!!
ヤロー
ヤロー
ヤロー
…あ…オレの雄叫びが岩山に木霊してやがんの…。
取り合えずこの日記書く機械、写真も撮れる様なんでこの風景を撮ってみんなに見て貰いましょうか。

(画像記録:第1回目)

(音声記録:第3回目)

ここまでの経緯を話してなかったな。昨日の日記で「大きいつづらと小さいつづらのどっちか選べって言われてる」って書いたじゃないですか。でまあ、当然の如くデカイほうを選んだわけよ。宇宙人達が銀河を駆け巡るこのご時世に「大きいつづらからはお化けが出てきました」なんて有り得る訳ねえだろって思ってね。いくらゴリン星人が鶏顔してるからって、雀ならぬ「鶏のお宿」なんてネタじゃ笑えねーもんな。
で、大きいつづらを貰うことにして、当然何が入ってるいるのか気になって蓋開けたのよ。そしたら中、なんだかよく分かんない機械で一杯で、真ん中にスペースが空いている。で、「ナニこれ?」ってゴリン星人に訊いたら、「これ、宇宙船。これに入って地球帰れる」って言うじゃないですか。どうやら大きいつづらじゃなくて、これ、一人用宇宙船だったみたいなのね。「へー。そうなんだ」とか言いながらオレ、何も考えずにそれに乗り込んじゃったのね。乗り込んだのはいいけど、動かせるわけ無いじゃない。だから「あのー、これ、オレ一人で動かせるもんなの?」って訊いたのよ。すると鶏星人、例によって首をヘコヘコ動かしながら、「大丈夫。君にあげた日記を書く機械。あれが操縦装置になる」って言うじゃないですか。
鶏星人から貰ったこの「日記を書く機械」って、地球の携帯端末とそっくりでさ。携帯電話を一回り大きくした奴。いわゆる《デカデンワ》って感じ?あれに似てるのよ。数百万光年を数時間で飛ぶ科学力を持ってるのにデカデンワかよ?と思ったんだが、奴等の言う事には、自分等の最先端技術は入っているが、できるだけ地球人の理解しやすい形状のインターフェースに改造した、っていうことらしいのね。確かに広めのディスプレイに、キーボードが付いていて、なんとなく感覚的にすぐ操作出来るような感じなのね。ただ、見知った配列のキーボードの他に、倍ぐらい訳の分からないキーが付いてるんだけどさ。しかし、このデカデンワのスイッチを入れたら、Windows Vistaの起動画面が現れたのには泣けたけどな…。ここまで芸細かく似せるなよ鶏星人…。
携帯端末に似せているけど、音声を文字変換する機能があるみたいで、今はそれを使って日記を書いてるんだけどね。あと、ホントに、日記書くと日記が更新されるし、はてなの日記読めたりコメント書けたりするんだよ。なんで地球から数百万光年離れた惑星から日記更新できるのか分からんがな。ウルトラバースト通信とかなんとか、時空を捻じ曲げてデータ送信するとか言ってたけどな。パケット料金幾ら掛かるんだ!しかしはてなダイアリー作った会社も、まさか宇宙の彼方から日記書く人間が現れることになるとは思わなかっただろうなあ…。
で、つづら型宇宙船に乗り込んだオレは、鶏星人に「このあとは?」って訊いたのよ。再び鶏星人、ヘコヘコ首を動かし、あとを続ける。「キーボードのCtrlとAlt、それから炎の形のアイコンが描かれたキーを三つ同時押し」オレは、「おお、変形再起動!」とか思いながらその通りにキーを同時押しする。「それから音声入力で行き先を告げる」と鶏星人。オレは特に何も考えずに「地球」とデカデンワに呟く。そして「あ、いや、まだ…」と鶏星人が言ったか言わないかと同時につづらの蓋はバタンと閉まり、ブーンという腹に響く駆動音をさせると、オレの体はつづらの中でフワッと浮き上がったのよ。オレ、行きのUFOでこれがなんなのか知っていたんだ。どうやら何の心の準備も無いまま、つづら型宇宙船はハイパースペース航法に入って宇宙に飛び出してしまったのよ!


(音声記録装置稼動中。以降も更新がある見込み)