オレと運痴 (後篇)

■ださださ!
そんな体育ダメダメダサダサの”スポーツ負け犬”なオレですから、運動会とか球技大会とか、校内でやる体育の大会はクラスの足引っ張りまくっていましたね。一番ヒンシュク買ったのは高校の時のクラス対抗の球技大会で、なぜか割り振りでオレ、バスケになったのよ。授業の一環だから全員参加なのね。いやあ、オレドリブルすら出来ませんよ!?
しかもその時の大会って我がクラスのバスケが優勝候補と目されていたのよ。当然バリバリのスポーツ男子だらけでさ。で、またこれがモテモテ君ばかりなのよ!そんな中で頭数そろえる為だけに入れられたオレは肩身が狭くてねえ。「フモ君は試合出る必要ないから」って練習もしませんでしたけどね。したって無駄なんだって!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!
そしたらね。決勝戦まで上り詰めたんだけど、チームのエースが怪我して足引き摺ってるのよ!でも補欠は運動ダメ男のオレ一人だったんで出す訳にも行かない!で、エースが無理して出場!「素敵なエースがこんな思いまでして試合出なければならないのはダサ男のフモのせいだ!」とばかりに女子の風当たりが強かったです…。すいませんみんなオレが悪いんです…。あ、試合は負けちゃいましたぁ〜。

■白銀は呼ばない!
オレは北海道生まれなんで体育の授業にスキーがあるんですよ。いやー、スキー大嫌いでいたね。だいたいさあ、寒い時に寒い場所へ寒い思いして寒い事しに行くってヴァカかよおオイ!何が楽しいんだよッ!などと減らず口叩いてましたよ。まあよくある負け犬の遠吠えってやつですね。嫌いなぐらいだから当然滑れませんよ。滑ってもひたすら漢らしい直滑降ですよ!へにょへにょ曲がって堪るかよ!しかも止まり方を知らない!じゃあどうやって止まるのかというと、《転ぶんです》。子供の頃からスキーは滑らされましたが、止まるの覚えたのは高校3年の最後のスキー授業の時でしたね…。
いかにスキーがダメだったかというと、例えば高校の時のスキー授業だと、1日潰して1学年全8クラスの半分、即ち4クラスが合同で参加し、町にあるスキー場へと行くんですね。ここで男女に分けます。1クラス40人としてこれを分けると20人づつ、4クラスで男女それぞれ80人づつになりますね。で、これを今度スキーの上手さによってAB2つのランクに分けるんですが、オレともう一人ドン臭い奴の計2名だけ例外としてCランクでしたね!要するに4クラス80人の男子の中でサイテーランクの運動神経だったということですね!やったぜ!
さてこのスキー授業、最後の日はクラス対抗のスキー競技となったんです。競技…例によって全員参加…また悪い予感がしましたね。技術のいる滑降なんかは当然できませんから、オレは平地をスキーで歩くバトンリレーに出ることになったんですね。スキーの上手い奴は全員滑降に出ていて、バトンリレーはそれと比べると、遊びみたいな競技だと思ってたんですよ。まあ歩ける事は歩けるし。そしたら蓋を開けてみると、大会の中で一番盛り上がる競技になってたんですよ!技術を競う滑降よりも、多人数が参加する競争のほうが白熱しますからね!さあレースの始まりだ!おお!オレのクラス結構早いじゃん!うお!今ん所1位だよ!ぶっちぎってるよ!向う所敵なしだね!うあああ、次オレの番かよ!という訳で後ろを大きく離してのオレの出番となったわけですがね。
クラス中の声援が熱かったですね!…でもね。もうね。なにしろオレですから。ドン臭いドン臭い。まるでスピードないんですよ。そして一人抜かれ二人抜かれ…結局オレ一人で最下位まで落ちましたね!最下位になってさらにどんどん前と引き離されていきますよ!この潔さったらないですね!声援していたクラスの連中が氷付いてましたよ!視線が冷たく刺さるのが痛いほどに分かったなあ!ようやくバトンを渡すポイントに辿り着きましたが、オレを待っていたクラスメイトが鬼みたいな顔をしていたなあ!そんなに怒るなよなあ!たかが授業じゃねえかよ!…なーんて今だから言えますけどね。あの時は恥ずかしくて情けなくて本当に涙目でしたよ…。クラスのみんなスマン…。

■いじけ虫だった!
なにしろこんな感じで運痴も甚だしいオレにとって、体育授業とかスポーツとかがセーシュン時代のトラウマでしたね…。これでオベンキョもダメでしたから(ぶっちゃけこれも学年最下位でしたね!オレ潔すぎ!)、いい所の一つもない学生生活でしたよ。若かりし頃のオレの心が捻くれていたのは運動も勉強もてんで駄目なコンプレックス塗れのいじけた学生生活を送っていたからでしょう。このいじけ根性は30を過ぎるまで尾を引きましたね…。ただ、今から思うと、運痴でもダサくても、とりあえず無理矢理にでも体を動かせた体育の授業って、やっていてよかったな、と思えるから不思議ですね。今なんてあの頃に輪をかけて動きませんからねえ…。