災厄の街 (監督:トビー・フーパー)


保安官のケヴィンは幼い頃の不可思議でおぞましい事件により父母を亡くし、それ以来得体の知れない”それ”に怯えながら暮らしていた。そしてケヴィンの誕生日が迫るある日、街中では異様な事故や狂った事件が多発していた。ケヴィンは思った、「24年前のあいつがまたやってきた…」。御大トビー・フーパーの快作。発狂して妻を射殺し、謎の超自然現象ではらわたを掻き出されて死ぬ父、天井から垂れる不気味な黒い液体、そのキーワードが誕生日である事。初っ端から飛ばしまくった演出で開幕するこの物語は、さらに中盤から理由も無く狂って行く町民達が描かれ、それら何一つ説明されない謎をばら撒いたまま、クライマックスの狂気と殺戮と崩壊へとうねるように突き進んでゆきます。あたかもブレーキの壊れたブルドーザーの如く終局へと驀進するパワフルな演出は、実にトビー・フーパーらしい。謎の正体も明かされますが、そんなもんお構い無しに死と絶望に塗れたラストまで突っ走るその暴走振りは、ある意味爽快ですらありました。多少ダレる場面とどこかで観た様な展開もあるけどそんなの気にしない!誰かトビー・フーパーにいかれた脚本とたっぷりの予算をあげてバリバリの新作ホラーを撮らせてやってくれ!