ライラの冒険 黄金の羅針盤 (監督:クリス・ワイツ 2007年アメリカ映画)

舞台はこの世界とは次元を異にするもう一つの平行世界。ここでは人々は「ダイモン」と呼ばれる動物の形をした精霊を従わせ、世界は「教権」と呼ばれる宗教の支配下だった。主人公ライラ(ダコタ・ブルー・リチャーズ)は何者かにさらわれた親友を探す為に旅に出るが、その途中でジプシャン族、魔女、鎧熊など様々な旅の仲間の助けを借り、世界を覆う陰謀と驚くべき謎を知ることになる。

えーっと…。最初に言っちゃうと、全然ダーメーでした。正直12歳以下推奨映画じゃねえかなこれ。お話の構成のお粗末さは大人には辛いでしょう。ダイモンだのダストだのもっともらしい用語が語られますが、だからナニ?って感じだし、ダイモン分離の陰謀!とか言われても、それの何がマズイの?と思えてしまいます。世界観に説得力が無い為、設定がゼーンブ単なる薄っぺらい絵空事のようにしか見えません。最初はその辺のお子ちゃまでしかなかったライラが、なんで特殊な能力を持っているのかが説明されないし、彼女の持つ「黄金の羅針盤」とかいう機械がそんな大事な物なら、護衛ぐらい付けとけよ、と思いますが、これを奪われそうになる危機なんてえのがしょっちゅう起こっちゃうのが既にわざとらしい。

あとさらわれた子供達がなぜ北極にいるって判ったのか、しかも、なぜわざわざ北極くんだりまで運ばなきゃならないのかが意味不明です。飛行船乗りやジプシャン族を仲間にし、大層な気球まで持ってるのに、なぜライラが単独で敵地に突っ込むのかが不思議で堪んないし、危機に至るとあわや!と言うところで都合よく助けが入っちゃうという展開が何度も何度も繰り返され、その芸の無い演出には噴飯させられます。実際、途中で笑ってしまいましたよ。あと魔女族ってナニ?今までどこで何やってた人たちなの?それとか「私が本当のあなたの親!」などという、おいおいスターウォーズじゃねえだろ、という展開も頭が痛くなりました。

美術だけは本当に良く出来ています。CGもきっと出来が良いものなんでしょう。主演の女の子もニコール・キッドマンもそこそこ頑張ってましたが、どうも性格設定が曖昧なせいでいまひとつ目立ちません。原作は興味無いし読んでませんが、案外映画は原作のダイジェストみたいになっちゃってて、それでこんな雑な構成の映画になってるのだろう、と原作ファンの方の為に擁護してあげてもいいかもしれない。逆に言えば原作ファンの方には原作のプロモ・ビデオみたいな感じで楽しめるかもしれません。しかし白熊達が群れを成す映像はなぜか山上たつひこのマンガを思い出して、やっぱり可笑しくてしゃあなかった…。

■His Dark Materials: The Golden Compass - Official Trailer