リアル”無頼派”(単なる自堕落) その2

早朝の下り電車には眠たげな、あるいは眠りこけた労務者ばかりが乗っている。殆どが作業着にズタ袋のようなリュックサックを提げている。皆表情には張りが無く目には力が無い。彼らの顔を見て憂鬱になるのは、多分自分も同じ顔をしているのだと容易に想像できるからだ。
酔いがまだ残っているのか体が妙に温まっていて早朝の寒さが少しも気にならない。これはメッケモノだ。これからもやろうかなグフフ、などと危ない考えが頭をよぎる。
喫茶店でコーヒーを買い歩きながら飲む。会社でタイムカードを押して部下の運転する車で現場に向う。途中の信号で車が急停止したので何事かと思いフロントガラスから外を覗き込むと、オレの乗った車のすぐ前でタクシーが原付バイクを踏みつけて止まっている。交通事故らしい。「なにがあったんだ?」と部下に訊く。「右折タクシーが直進してきた原チャリを撥ねたんです。ホントに目の前で起こりやがった」オレは目を凝らして見る。だが原付バイクの運転手の姿が見えない。「撥ねられた人は何処にいるんだ?」オレに促され部下が指差した先には、何かのゴミのような塊が路上に転がっているのが見えた。いや、それは、オレにも見えていた。ただ、人間のようには、見えなかったのだ。