AVP2 エイリアンズ VS. プレデター (監督:コリン・ストラウス / グレッグ・ストラウス 2007年アメリカ映画)

異種格闘技戦とは異なったジャンルのもの同士が一つのリングに上り”本当に強いヤツは誰か”を見極める戦いである。これまで猪木対アリ、ゴジラキングコンググレートマジンガーゲッターロボ、ジェイソン対フレディなど、そのジャンルの最も強いもの同士がしのぎを削る対戦カードが実現しているが、この『AVP2 エイリアンズ VS. プレデター』は全作におけるエイリアンとプレデターとの遺恨試合の決着を付けるべく市街地へと戦いの舞台を移して再戦されたものである。しかし異種格闘技戦、その戦いの趣旨は志高く思えるものの、オトナの事情というヤツなのか、実際には単に客寄せ興行としての企画もん臭さがあるのも否めない。

それはどの戦いも申し合わせたかのように痛み分けの決着を取ろうとするからである。大体グレートマジンガーゲッターロボ共闘するも対決などはしておらず、「どっちが勝つんだ!?」と勇んで劇場に足を運んだガキのオレは騙された様な気分になって帰ったものである。しかしそもそもが世界観の違う人気キャラを両方いっぺんに見られるというお得感のみで成り立っている訳だし、それ以上求めるのは欲張りと言うものなのかもしれない。だからこの『AVP2』にしても、前作が別にどうといった面白さの無い凡作だったのにも拘らず、こうして続編ができるとやっぱり観に行くし、3作目が出来たらやっぱり観に行くのだろう。

で、この『AVP2』なんだが、うーん、前作が南極大陸という特殊な場所における異様なシチュエーションということで、エイリアンとプレデターというお馴染みのキャラに新鮮な要素を付加していたんだが、この『2』では舞台がアメリカのその辺にあるような田舎町であり、主要登場人物が嘴の黄色いティーンで、そこにモンスターが現れるとなっちゃあ、これはもう自ら望んで60年代70年代に粗製濫造された薄っぺらいB級SF映画を模倣しようしたのかとさえ思えてしまう。物語冒頭でガキ同士のイジメだか小競り合いだかが描かれた時はどうにも悪い予感がよぎった位だ。以下ネタバレあり。

なにしろ登場人物に魅力が無い。「どうせ端っこからブチ殺されていくんだろうなー」と思っていると実際その通りになってしまう。だから前半の街が次第にエイリアンとプレデターによる殺戮の戦場と化してゆく場面はたいした盛り上がりも無いまま進んでゆく。結局、ブチ殺されてゆく市民たちというのが丸腰なわけだから、なすがままになぶられていくのを観ているだけになってしまうからである。しかし、州兵が登場し、登場人物達が銃を手にして反撃し始める中盤からなんとか観られるものになってくる。そう。アメリカ映画の基本は見境無しの銃撃戦なんだよ!

そして州兵達でさえ全滅し、登場人物たちが自らの手で生き残りを賭け始めるところからやっと映画らしい見せ場が出来てくる。この中盤からエイリアンがゴキブリのように大量に押し寄せるようになり、倒しても倒しても現れるエイリアンとの戦いの恐怖感がじんわり効いて来る。しかも今作では女子供どころか妊婦まで情け容赦なくチェストバスターに腹を食い破られ、妙な部分で鬼畜ぶりを発揮している。そしていよいよ政府が重い腰を上げるが、「生き残った人たちは町の中心部に集まってください」というどう考えても怪しげな通達でもって、主人公達の意見が二分するあたりで、賢明な観客であれば、「ははーん熱核照射で全部やっちゃうのね」と分かってしまう。

だいたいこの何の変哲も無い田舎町に、何故か原子力発電所がある時点でお話の行方は見え見えなのである。つまり広島長崎をその端緒とするところのバタリアン方式と言うかバイオハザード方式というか、「取り合えずウジャウジャと沸いてるもんがあったら熱核兵器で全部イテまえ」というアメちゃんらしい豪快かつ大味な結末の付け方が待っているだけであり、「ああまたなのね」とこの辺で鼻白んでしまう。モンスター両雄の対決は夜と土砂降りの雨とで何がどうなっているのか皆目分からず、キメラである”プレデリアン”なる新種も何がどう強いのか最後まで分からなかった。最後にエイリアン1作目で非道な企業として名前が出てきたユタニ社の現代における胚芽が垣間見せられるが、これもなんだかターミネーターにおけるサイバーダイン社じみた描かれ方で、何か既視感ありまくりだった。

Alien vs Predator - Requiem trailer