最近聴いたCD / U.R.、Burial 、DJ Marky & Friends

■Electronic Warfare 2.0 / Underground Resistance

エレクトロニック・ウォーフェア・2.0

エレクトロニック・ウォーフェア・2.0

アメリカ、ミシガン州デトロイトデトロイト・テクノの中心人物、Mad Mike率いるUnderground Resistance(U.R.)の待望の新作がこの『Electronic Warfare 2.0』。”地下抵抗組織”という不穏な意味のグループ名は、既存の商経済や流通、メディアのあり方への抵抗ということである。我々が欲しいと思っているものは欲しいと思わされているものに過ぎない。それは企業とメディアが結託し、己の利益のみを優先した歪な経済だ。人々は”幸福な生活”というものを規定され、本来は不必要なものを必要と思い込まされ、無意味な価値観の為に踊らされているのだ。そしてその中で貧富に差が生まれ、下層階級へと追い込まれた多数の人たちが不幸になってゆく。そんなものは全て間違いだ――これが彼らU.R.のメッセージである。
あまりにストレート過ぎる主張ではあるけれども、これは低所得者層の増大によりアメリカ最大の犯罪都市と化したデトロイトのゲットーに住む黒人達にとっては、切実極まりない問題なのだろう。そしてU.R.がユニークなのは、その主張をダンス・ミュージックでもって広めようとしている所だ。しかも、その作られた音楽は、ガチガチに頭の固まったアジテート・ソングでは決して無い。強靭なバネを思わせる躍動感に満ちたリズム、宇宙空間を彷徨っているかのような幻想的で美しいメロディ、ダンス・ミュージックというものに対する虚飾の無いストイックさ。これらは決してぶれる事のない、彼ら強固な意思の中から生み出された音なのだ。メッセージが正しいのではない。音楽が正しいのである。

■Untrue / Burial
Untrue

Untrue

イギリス、ブリストル。凍て付きどんよりと澱んだ曇天の町から生み出される、暗く冷え冷えとしたダブステップ・サウンド。引き攣ったリズムがカチカチと踊り、それに不安げなメロディがぶわぶわとかぶさってゆく。まるで実体の無い影のような、それとも幽霊のような音。Burial の2ndアルバムであるこの『Untrue』は1作目と殆ど変わることの無い陰鬱なリズムで満ち溢れている。音の変化の無さはBurialの住む世界の変化の無さということなのだろう。終わる事の無いようにさえ思える、雨模様の灰色の空ばかりを見上げているような日常。そんな世界にBurialは生きているのだろう。前作と比べてみれば若干音がこなれてきたような気がするし、前作の墨を流したような闇の黒さも薄まってきているかもしれない。しかし闇は闇だ。そしてこの憂鬱な音を聴くと、なぜかひどく心が休まるのだ。それはきっと、例え沈んだ色彩の世界に住んでいても、Burial自身は自らの世界を愛しているからで、その感情が、聴くものに伝わってくるからのような気がする。
●Burial - Ghost Hardware


■Master Plan / DJ Marky & Friends
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ブラジル、サンパウロ。ブラジリアン・ドラムンベースの名プロデューサー、DJ Markyとその盟友達のトラックを集めた2CDのDJMixとNon-Mix集。イギリス生まれのドラムンベースであるが、ブラジルに流れ着いた後これに様々なブラジル音楽が融合し、さらにパーカッシブかつエモーショナルな音楽へと昇華している。その軽快で疾走感溢れるサウンドからはブラジルの陽光の眩しさと暖かさ、その空気感まで伝わってきそうだ。ひょっとしたらドラムンベースは彼らの為に生み出された音楽なのかもしれない。