ブレイブワン (監督:ニール・ジョーダン 2007年 アメリカ・オーストラリア映画)

舞台はニューヨーク。FM放送局のDJを務めるエリカ(ジョディ・フォスター)は夜の公園で婚約者とともに暴漢に襲われ婚約者は死亡、自らも心と体に大きな傷を残す。事務的な警察の態度に業を煮やしたエリカは護身用に銃を入手。ある日夜のドラッグストアで銃を持った暴漢を射殺してしまい、さらに乗客に絡むチンピラをも銃殺する。そこからエリカの中で何かが大きく変わって行った。悪を許すな、と。

銃社会の恐ろしさや民主主義社会において報復とは何か、また善悪とは何によって決められるものなのか、なーんてテーマがあるのかもしれないが、オレはそんなふうには見なかった!あのね、この映画はね、
ジョディ・フォスターが主演を張った、『タクシー・ドライバー』の再演なんだよッ!!
舞台がニューヨーク。夜の闇に蠢く汚いチンピラどもへの怒り。許可書の無い銃を入手。まず最初の殺しが夜のドラッグストアの暴漢相手。そこから逃げ出す主人公。屑どもを一掃してやると誓う主人公。最後に乗り込むのが薄汚い貧民街のビル!次々に射殺して廻る主人公!そしてラストは…!ほら見ろこれって『タクシー・ドライバー』じゃないか!1976年マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演で製作された映画『タクシー・ドライバー』は孤独で鬱屈した青春像とその暴発する狂気を描き、映画史上に鬼火のような暗い輝き残す名作中の名作だが、この映画には13歳の娼婦役でジョディ・フォスターも出演していた。そして製作から30年たった今、成長したあの日の娼婦アイリスが銃を手に取りトラビスの遺志を継いで街の屑どもに制裁を加えることを決意した!これがその『ブレイブワン』なのだ!行けアイリス!屑どもを血の海に沈めろ!オヂサンは君の味方だ!ヒューヒュー!…というふうにオレはこの映画を観てしまいましたが何か間違ってますかッ!?
少し冷静になって映画として観てみると、これは最初考えていたようなサスペンス・アクション映画とはちょっと違った雰囲気なんだよね。恋人を失ったエリカの悩みや苦しみや喪失感などのドラマが非常に情感豊かに描かれ、ある意味情緒過多でさえあるのよ。女性映画じゃないのかとさえ思ったぐらい。この辺、監督のニール・ジョーダンの女性的な(ゲイ的な?)センスによるところも大きいとは思うが、製作総指揮をも務めたジョディ・フォスターの仕切りも結構あったんじゃないかな。ニール・ジョーダンをこの映画にスカウトしたのもジョディだという話もあるしね。
しかしこのドラマ部分は実はあんまりノレないのよ。オレからすると大甘なの。血に飢えたオヤジであるこのオレとしては、ウダウダ悩むのはもういいからさっさと糞野郎どもの粛清を始めやがれ!血だッ!銃撃だッ!復讐なんだああ〜〜ッ!というちょっと常識的な社会人としてナニなテンションでこの映画観ていたもんですから。やっぱねえ、人間ドラマ、好きじゃないんですわオレ。
『タクシー・ドライバー』との相似という点からもう一度考えるなら、男のトラビスは殺すことに理由なんか必要無かったが(煮詰まった自分という個人的な理由)、女であるエリカには、やはりきちんと殺す為の切羽詰った理由(恋人の死、という他者との関係性)が無ければならなかった、と言うことでしょうか。女性はやっぱり銃持っていきなり暴れたりしないでしょ。その辺に男と女の暴発の仕組みの違いがあったような気がして、このあたりの説明の為にドラマが必要だったのかな、とちと思いました。

■The Brave One Trailer