ロケットマン! (監督:チャルーム・ウォンピム 2006年 タイ映画)

鳥だ!飛行機だ!いいやあれはロケットマンだ!…1920年代のタイ。度重なる牛泥棒に農民達は困っていた!田んぼを耕すのに牛が必要だからだ!しかーし!そんな農民を助ける為、悪い牛泥棒に正義の鉄拳と火花散るロケットを飛ばす者がいた!誰あろう、それがロケットマンなのだ!そんなロケットマンにはもう一つの目的があった!それは幼い頃両親を殺した牛泥棒を見つける事!そしてある日その牛泥棒を見つけたのだ!だがそれは恐ろしい妖術使いでもあったのだ!ロケットマンの運命やいかに!?頑張れロケットマン!行くんだロケットマン!!

『マッハ!』『7人のマッハ!!!!!!!』『トム・ヤム・クン』に続くタイ料理のようにホットなタイ・ムービーの新作、それがこの『ロケットマン!』である。1920年代のタイにどうしてロケット?と思われるかもしれないが、実はこれ、タイで農民達が雨乞いの儀式の際に使う爆竹を巨大化させたものなのである。だから正確には『爆竹マン!』なのではあるが、なんだかそれでは公園で爆竹鳴らして喜んでいる田舎の中学生みたいなので、ここはやはり『ロケットマン!』なのである。しかもこの爆竹、もといロケットが大量の弾幕となって乱舞するのである。その姿はあたかも板野サーカスの如きである。(スマン。言い過ぎた。それほどでもない。)しかも主人公は、このロケットにあたかも『ファンタスティック・フォー』に出てくるシルバーサーファーのように乗っかって宙を舞うのである。有り得ない。そう、即ちこの『ロケットマン!』は、正統なるアホアホ映画でもあるのだ!

主人公はロケット使いであるばかりではなく、ムエタイの達人でもある。ロケットで敵を蹴散らし、ムエタイで止めを刺すのである。もはや鬼である。鬼神である。誰がこんなのに勝てるンだァッ!?などと思っていたら、なんと敵役は妖術使いだ!恐るべき妖術でロケットの弾幕ムエタイの鉄拳も弾いてしまう!上には上がいるのである。この無敵の妖術使いをどう倒すのかが本作のポイントになるのだ。さらにさらに、悪漢から農民を救い、何処ともなく去ってゆく主人公、という構図はまんま西部劇。即ち、この『ロケットマン!』は、”マカロニ・ウェスタン”ならぬ”トムヤム・ウェスタン”でもあるのだ!それにしても、ムエタイ、ロケット、妖術、西部劇と、ムチャクチャかつなんでもアリなその世界観は、かつての香港アクション映画を思わせるような、娯楽とインチキ臭さがてんこ盛りの楽しさ!香港アクションが下火になってしまった今、最も元気のあるハチャメチャ・アクションを生み出すのは、このタイ映画しかない!

製作総指揮には『マッハ!』『7人のマッハ!!!!!!!』『トム・ヤム・クン』を手掛けたソムサック・デーチャラナタブラスート。なるほど元気があるわけだ。主人公のロケットマンは第2のトニー・ジャーと呼ばれ、『7人のマッハ!!!!!!!』でも主演を演じたダン・チューポン。顔の暑苦しさもトニー・ジャー並みだ!敵役の妖術使いには『マッハ!』のアクション監督、『7人のマッハ!!!!!!!』の監督を務めたパンナー・リットグライ。一見お調子者だが腹黒い悪役ウェン閣下にプティポーン・シーワット。そして紅一点、ヒロイン・サオは新人カニャパク・スワナクート。彼女のアジアン・ビューティーぶりが素晴らしい!濃くてくどい男達の世界で一服の清涼剤となるはずだ。映画としては前半のアクション・シーンがどうにも型通りで躍動感に乏しく、ちょっと心配させられたが、後半それを巻き返すから安心していい。ワイアーアクション満載なので、トニー・ジャー映画の本物のアクションを求められる方には物足りないかもしれないが、なんでもありの娯楽アクションだと割り切って観るとこれはこれでイケるんじゃないかと思う。

それと名前が分かんないんだが、かつて007で名物悪役として名を馳せた”ジョーズ”そっくりの巨漢でブサイク顔の悪役がいい味出してる。こいつ、S字型に曲がった2本の巨大な棍棒を操り、”怪獣”としか言いようの無い抜群の破壊力で主人公と味方達を危機に陥れる。この棍棒の武器がまた新鮮で、タイの古代武器かなんかなのかと勝手に推測しているのだが、タイ武術にはまだまだ奥深いものがあるように感じた。

ロケットマン!(原題:Dynamite Warrior) trailer