ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(監督:庵野秀明 2007年 日本映画)

■最初のエヴァとオレ
今頃になってようやくエヴァ劇場版を観ました。エヴァにはそれなりにはまった過去を持っているんですが、劇場が混んでそうでずっと敬遠していたんです。

エヴァンゲリオンはTVでちらっと見たのが最初ですね。もうアニメで騒ぐ歳でもなかったんですが、あちこちのメディアでじわじわと絶賛の声が聞こえてきて、ちょっと観てみようという気になったのが始まりだったんですね。今から考えるとその時は第三話ぐらいだったのでしょうか、人気の無い街と蝉の声という、奇妙な静けさの印象が強かったでした。あと「使徒」という言葉がやたら連発され、さらによく分からない単語が常に出てきていたので、お話自体は「これナニ?」って感じでありました。続けて観ようとはその時は思いませんでしたね。

その次に見たのが例の悪名高い最終話です。なんで最終話をたまたま観たのかは憶えていません。物語さえ掴んでいないと言うのに突然あの最終話です。ビックリはしましたが、逆にTVのアニメで随分実験的なことをやるなあ、と感心してしまいました。だからそれほど印象は悪くないんですね。TV放送中にビデオ(あの頃はまだVTRしか無かったんです)がリリースされていたかどうかは記憶があやふやなのですが、ビデオレンタルショップにこのエヴァのビデオが並び始めた時には、何故だか胸が高鳴りました。ビデオはいつもレンタル中で、なかなか借りられなかったのですが、足げく通ってはチェックして、借りられる状態になっていたら即ゲットしました。その時たまたまピザーラのピザ頼んで食いながら観ていたら楽しかった記憶が強くて、それ以来部屋で映画を観る時にはピザ頼む癖が付いたんですね。なんとオレのピザ好きの原因は、エヴァだったというわけなんですね!

■途中のエヴァとオレ
エヴァはその後、弟が録画したビデオをダビングしてもらって何回も観ていましたね。衛星放送独自の編集版とか言うのもビデオで持っていたな。あの中途半端な映画版も何とか出来た完成版の映画も観ました。劇場で映画を続けて二回観るということ絶対しないオレでしたが、エヴァは二回観てました。あとはまあ、エヴァファンが辿る様なあれやこれやを全部踏襲していましたね。エヴァグッズ買いの、研究本読みの、ゲーム買いの。アニメ声優になど興味が無かったにも拘らず、林原めぐみの名前だけはしっかり憶えました。実は、フィギュア買い始めたのもエヴァあたりからなんです。バンダイから出ていたヤツでしょうか、綾波レイのフィギュアをイトーヨーカドーの玩具売り場で始めて見た時は鳥肌が立ちましたね。女の子がポーズを取って立っているオニンギョを買う、というのは、中年男子にとっていかに敷居の高いものであったか判って貰えるでしょうか!レジのオバチャンに変な事言われないかなあ、なんてドギマギして買った綾波レイフィギュアは、しかし、そんな迷いなど補って余るほどに甘美に満ちた完成度でありました。えーと、マニアというのは、このようにして泥沼にはまって行くものなのですよね…。

しかし、エヴァを面白いと思い始めたのは、第一話目をビデオで観た時に、そのアニメーションとしての動きの良さからなんです。よくもまあここまで動きのあるアニメを作るものだなあ、と感心していたのが最初ですね。それと同時に、庵野秀明の、これまでの日本の特撮やアニメに関する引き出しを総動員したくすぐりが実に面白かった。それは実にやんわりとしたもので、仲間内だけに分かるような閉鎖的なものではなく、子供時代に普通に特撮やアニメを見ていたものなら普通にああ、と判る様なものだったこともよかったですね。ガイナックスという会社自体には、これ以前に観た『王立宇宙軍オネアミスの翼』というアニメにあまり感心しなかったのでそれほど興味はありませんでしたね。だから、その後の『トップをねらえ!』や『ふしぎの海のナディア』は観ていないんです。

■その後のエヴァとオレ
エヴァに関わる様々な言辞や論評や推理などは、読んでいて面白いし、なるほど、と思わされますが、膨大緻密過ぎて、自分からエヴァについて何か語ろうとは思えません。今回こんな書き方をしたのもその為です。語られ解釈されることを予め想定して作られた物語である以上、これだけの言辞が溢れるのは当たり前でしょうが、自分がその中に付け加えられるような事が無さそうな気がするからです。TV放送終了後からの様々なエヴァ商法に嫌気が差していたのもあって、あまりエヴァのことについて今更あれこれ言う気がしないのもあります。本当の事を言えば、劇場公開されてすぐ観なかったのも、そういった食傷気味な部分もあったからです。

この劇場版に関しても、エヴァファンが観たら誰でも感じるような事と同じ感想を抱いたような気がします。これらも製作者の想定内なんだろうなあ。ただ、今更何でエヴァ?ということには、大人の事情もあるのでしょうが、出来上がった作品を観るならば、やっぱり、魂の入った出来栄えをしていたから、これはこれでよかったのではないでしょうか。リメイク版ということですが、オリジナルで唐突過ぎたり不自然だなあと感じていた台詞や展開もそのままなんですね。これはオリジナル製作当時も製作者側が感じていた事らしいのですが、そのままなのが少し気になりました。ただこれ、多少ネタバレになりますが、庵野が今回のリメイクで構想した”繰り返す物語”という部分で必要だという事のような気もするのですね。だから評価は全作品を観てみなければ判らない部分がありますね。

「逃げちゃ駄目だ」という台詞は今聞くとなんだかこそばゆくて笑ってしまいましたが、「笑えばいいと思うよ」は、これはやはり外せない、歌舞伎で言えば大見得を切る時の台詞って感じがして、判っていてもここで盛り上がっちゃうのがまた可笑しかったですね。絵的には寂しげな風景描写がとても素晴らしく出来ていました。そして、やはり、あの「次回予告」ですね…。この「序」は普通にリメイクでしたが、次回の「破」は、なんだかもう観たことの無いあれやこれやが現れて、とんでもない事態になっちゃってるようじゃないですか!?これはまた観なきゃ駄目じゃないですか!?こうして、またもや製作者の術中にはまってゆくんですね…。

エヴァンゲリヲン新劇場版:序 予告編