ヤミ金チラシ

オレの職場の事務所横にある現場作業員諸君の着替え&休憩所は、現場作業員を会社に斡旋している手配師の社長の仮事務所も兼ねている。ここには「安全第一」だの「指差確認」だのといったよくある標語の他に、「給料前借りは月¥50000まで」なんていう貼り紙がある。ついでに言っちゃうとその後には「¥50000を超える前借りには利子10%」などというアコギな文言まで続く。どうも現場作業員の皆さんが頻繁に給料前借りをしているらしく、それに釘を刺すつもりで斡旋屋社長が貼ったものらしい。作業員の給料自体それほど高くないという話は聞いた事があるが、それでも月5万円の前借をしょっちゅうしなければやっていけない生活というのも随分さもしいもんだなあ、などと他人事ながらちょっと思っていた。
しかしそんなある日、その貼り紙をふと見ると、書かれていた文章が黒マジックで塗りつぶされているではないか。ううむこれはどうやら斡旋屋社長金融システムが遂に崩壊の憂き目に遭ったに違いない。原因はやはり現場作業員諸君の多重債務と債権回収不能によるものか。世知辛い話である。
ところが、その文字の消された貼り紙の横に、新たに何か貼られているものがあるではないか。
「あちこちの金融会社から断られた方に!簡単・安心ご融資!キャッシングの○○○」
…それは街角なんかによく貼られているひたすら怪しい金融会社のチラシであった。簡単に現金を貸してくれるが、その代わりべらぼうに高い金利を毟り取る違法金融、いわゆる【ヤミ金】のチラシである。多分斡旋屋社長が貼ったものなのだろう。要するに、「もう給料の前借はさせない。金の欲しい奴はヤミ金からでも借りろ」ということなんだろうが、ヤミ金じゃシャレになんねーよな…。というか、現場作業員の皆様は殆どフィリピン人だし、そもそもヤミ金も金貸してくれないんじゃないかと思うんだがな…。