ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展 〜アリス、あるいは快楽原則〜 ラフォーレミュージアム原宿

チェコのシュルリアリズム映像作家、ヤン&エヴァシュヴァンクマイエルの企画展。シュヴァンクマイエルについてはアートアニメーション作品で知ったのだが、そのグロテスクで暗く鬱蒼としたヨーロッパ的な作品群は、世界でも高い評価を得ている。展覧会ではそのシュヴァンクマイエルのドローイング、コラージュ、オブジェなどが並べられ、シュヴァンクマイエル・アートの変遷を楽しむことが出来る。
ダダイストマックス・エルンストの影響を感じさせる初期の作品では、シュルリアリズム絵画への気負いを多大に感じさせるが、どこか遊び心と艶かしさを醸し出すその作品は、単なるグロテスクさだけではない豊かなユーモアを併せ持っている。このユーモアが現代でも多くのファンを獲得している一因なのだろう。その中で映画『ファウスト』『アリス』で使用された巨大な人形・操り人形の展示が何より目を引いた。東欧の感謝祭などで使われる被り物を模した物なのだろうが、日本の”なまはげ”に通じるプリミティブな怖さと泥臭さを感じた。
また、最近日本でも刊行された『人間椅子』『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』の挿絵原版となるコラージュ、アッサンブラージュが実に現代的に洗練されていてポップな味わいであり、シュヴァンクマイエルがまだまだ健在であることをうかがわせる。
可笑しかったのは「触覚の芸術」と呼ばれる、粘土を中途半端に捏ねただけのオブジェが並べられた作品だ。これらはその完成した形状と言うよりも、粘土を捏ねた時の「むにゅっ」とした感触がいかに心地よかったかを訴えかけようとしているのだろう。触覚を含むあらゆる直截的な感覚をどう視覚化しようかと腐心している、シュヴァンクマイエルというアーチストの作家性を垣間見ることの出来る作品である。しかし見た目は変だし妙なのだ。この結果的に変になってしまう点が、シュヴァンクマイエルの面白さなのだろう。つまり、シュヴァンクマイエルは、”可愛い”のだ。(ラフォーレミュージアム原宿にて9月12日まで)
■展覧会ポスター        ■作品集人間椅子
  
■作品集不思議の国のアリス    ■作品集鏡の国のアリス
 

■Jan Svankmajer, Et Cetera

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