ルネッサンス (監督:クリスチャン・ヴォルクマン 2006年 フランス/イギリス/ルクセンブルグ映画)

2054年、粉雪舞う冬のパリ。女性研究者イローナの誘拐事件を追う警部カラスはその背後に巨大複合企業体アヴァロン社の暗躍があることを知る。そしてアヴァロン社が闇へと葬ったある医療研究の存在を突き止めるが、それは人類の運命をも変えてしまう恐るべきものであった。

白と黒、モノクロームのみで表現されたフランスのSF・CGアニメーション。近未来社会で一匹狼の警部が巨大企業の陰謀を追うという物語、バンドデシネやアメリカンコミックそのままの映像は、ブレードランナー・ミーツ・シン・シティといった所か。また、監督のインタビューでは「GHOST IN THE SHELL攻殻機動隊」の影響を語っており、サイバーな世界観は確かにそれを思わせる。人物描写は古典的なハードボイルドだし、SFとしての世界観はそれほど新鮮なものではないのだが、いわゆるフューチャー・ノワールとして観るのならこれはこれで独特の雰囲気を醸し出しており、個人的には嫌いではない。なにしろソリッドで目が痛くなるほど強烈なコントラストの画像がこの映画の主役と言ってもいいほどで、このビジュアルセンスをとことん堪能したいと思われたならお薦めしてもいいかもしれない。古くから存在するパリの街並みを侵食するかのようにそびえ立つ未来建築や未来テクノロジーのガジェット、といった美術もクール。「ブレードランナー」における近未来のロス市街が人種と建築物の混沌とした坩堝であったとするなら、「ルネッサンス」のパリは未来でありながら既にヨーロッパ的な黄昏の中に存在しているかのように見えた。

物語としてはクライマックスの鍵となるある事実が、それほど深刻な自体であるのかがどうも納得できず、ドラマとして多少弱いような気がした。ハイテクを駆使した犯人捜査や光学迷彩に身を包んだ敵の襲撃などのSFセンスは楽しい。くっつきそうでくっつかない男女関係には非ハリウッド的なものを感じた。なおこの映画では吹き替えに『007/カジノロワイヤル』のダニエル・クレイグ、『ロード・オブ・ザ・リング』のイアン・ホルム、『未来世紀ブラジル』のジョナサン・プライスなど豪華俳優陣があたっているが、実のところよく分からないので、フランス語での上映のほうが雰囲気があってよかったかもしれない。




★公式サイト:フランス日本 

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