最近聴いたCD〜現在ダブステップ状態!

イギリスはかつてジャマイカを植民地としていた時代があり、現在でもジャマイカ移民が多く生活しているといういわば因縁浅からぬ関係なのであるが、そのせいかジャマイカン・ミュージックであるレゲエもイギリスではよく聴かれているらしい。あまり表面には出ないがUK音楽シーンの底流にはレゲエの影がどこか付きまとっている。パンクミュージック華やかし頃、そのムーブメントはレゲエとの共闘体制の中で育まれていた部分もあり、だからこそ当時のレゲエはアナーキーなパンクに対しレベルミュージック(革命の音楽)とさえ呼ばれていたのだ。
80年代UKニューウェーブシーンにおけるレゲエ・ミュージックの影響は最も有名なアーチストで言えばポリスやUB40が挙げられるが、それ以外でもスカ・ムーブメントのザ・スペシャルズなど様々なアーチストの名前を見つけることが出来るだろう。90年代に入りレゲエ/ダブの強い影響下にあったグループとしてマッシブ・アタックやスミス&マイティなどの所謂ブリストル・サウンド勢が有名であろうが、音楽ジャンルとしてはレゲエスタイルを160bpmの高速ビートでビルドアップした”ジャングル”が登場し、それは後にドラムンベースとして洗練されてゆく。
そしてそのドラムンベースと同じくUKクラブシーンでダブの強い影響を受けていると思われるのが、最近注目を浴びているダブステップというジャンルである。クラブ・ミュージックのダブ的展開というのはこれまでも数多くあったが、それがジャンルとしてここまで騒がれるのも珍しい。そして音のほうを聴いてみると、これまでのUKダブがあからさまにオリジナルのジャマイカン・ダブからの影響のものであったのに対し、これらダブステップの音はドラムンベースなどのブレイクビーツサウンドから派生的にダブミュージックを発見したとても若い世代のアーチスト達の音楽だという気がする。
だから人気のSkreamあたりを聴いても、オレのような古いジャマイカンダブサウンド好きとしては何が新しいのかピンと来なかったりするのである。ただダブサウンドのエレクトロニックな展開としてみれば、若者達が新たに発見した”ダブ”への興奮が伝わってこないでもない。つまりとても若々しいジャンルとも言えるわけで、これからのサウンドの深化と熟成が楽しみでもある。そしてなにしろBurialだ。このアーチストは既に完成されている。ダブステップがこのアーチストを生むためにあったのだとしても過言ではないかもしれない。

■Burial - Distant Lights / Burial

Burial (HDBCD001)

Burial (HDBCD001)

Hyperdub Recordsからリリースされた2006年の1st。Daddi GことThe Space Apeが1曲で客演。映画「ブレードランナー」や「未来世紀ブラジル」のペシミスティックな世界観を表現したようなスモーキーなダブとBurialサウンドの特徴でもあるPhotek直系の硬質ドラムで構成されたダブステップの金字塔アルバム。
http://www.ilovemusic-jp.com/club_dance/dubstep/burial_distant_lights_burial.html

陰鬱なダブステップビートを紡ぎだすこのプロジェクトにはその音にふさわしく《Burial=埋葬》という名前が付けられている。野田努はこれを指して「UKレイブシーンへの追悼」とライナーで述べているが、狂騒に満ちたクラブカルチャーに引導を渡すべく鳴り渡るこの葬送曲のあとに、Burialは何が待っていると考えているのだろうか。カクテルライトに満ちたクラブから帰った部屋の心寂しく何一つ変わらないささくれた現実の光景への挽歌なのか。何か心をざわめかせずにはいられない孤独感と疲弊感に満ちた音。マッシブ・アタック、トリッキーの正当な後継者たる貫禄を備えた暗くディープな1stアルバム。

■Skream! / Skream

Skream

Skream

「ITAL」や「BIG APPLE」からのリリースでも知られる「SKREAM」による渾身のアルバムが、ホーム・レーベルの「TEMPA」から3枚組で登場!!重いビート、重圧ベースが交錯する極上の激ドープ・ダブ・ステップ満載!!「SOUL JAZZ」で活躍する「DIGITAL MYSTIKZ」によるリミックスも収録した注目作!!「DJ ZINC」、「FREQ NASTY」、「MR SCRUFF」などもプレイ!!!ダブ・ステップ好きは必ず押さえておきたい1枚です!!!
http://www.technique.co.jp/gaze/nitty-gritty/of/item.synthdef?id=29779

ダブ・ミュージックに初めて触れた若者達が「取り合えず自分等も演ってみよう!」という意気に満ちた高揚感を感じさせる、実に若々しさに満ちたダブステップ・アルバム。ただ、若すぎてちょっと拙い印象があるなあ。

■Kode9 and The Spaceape - 9 Samurai / Memories of the Future

Memories of the Future

Memories of the Future

2006年の1st。"Kingstown", "Backward"等10インチでリリースした曲+新曲10で構成。レゲエ/ダブ色の濃いスモーキーなビートの上を、Spaceapeがダブ・ポエットするダークなダブステップ・アルバム。Ms.Hapticの妖艶なフックとメランコリックなメロディカが印象的な "Curious"も秀逸。
http://www.ilovemusic-jp.com/club_dance/dubstep/kode_9_and_the_spaceape_9_samurai_memori.html

おおっと、これはかつてUKレゲエシーンにおいて絶大なる賛辞を得ていたダブ・ポエット、リントン・クウェシ・ジョンソンを髣髴させるポエト・リーディングだ!あんまり似過ぎていてLKJ本人?とさえ思ったほど。全体的に和みのダブステップを聴かせます。あと「七人の侍」っぽいメロディの曲があるんだけど気のせい?

■Various - Today - The World Is Gone

The World Is Gone

The World Is Gone

XL Recordingsからリリースした2006年の1st。全曲でヴォーカルをフューチャー。ダブステップの重低音ビートをベースに、フリーフォーク/エレクトロニカの叙情性を融合した妖艶且つクールな傑作アルバム。7インチでリリースした"Hater", "Sir"も収録。
http://www.ilovemusic-jp.com/club_dance/dubstep/various_today_the_world_is_gone.html

うーん、フォークソングな女性ボーカルとダビーな重低音がどうも水と油のような気がして、「流行ってるみたいなんでダブステップやってみましたあ」という俄か仕立ての感じがするなあ。

■V.A - MARY ANNE HOBBS PRESENTS THE WARRIOR DUBZ

Mary Anne Hobbs Warrior Dubz

Mary Anne Hobbs Warrior Dubz

BBC RADIO 1」のナビゲーターとしても知られる「MARY ANNE HOBBS」監修による大注目のダブ・ステップ・コンピが、奇才「μ-ZIQ」主宰による老舗レーベル「PLANET-MU」より登場!!「BENGA」、「DIGITAL MYSTIKZ」、「PLASTICIAN」、「LOEFAH」などの実力者達による珠玉のダブ・ステップが詰め込まれた濃すぎる1枚!!「SHIZZLE」を筆頭に数々ラッパーをFEAT.したトラックも収録!!ダブ・ステップ好き垂涎モノ!!!
http://www.technique.co.jp/gaze/nitty-gritty/of/item.synthdef;jsessionid=40E61047C5E64518B989B546F76CDD2F?id=29840

ドラムンベースブレイクビーツからのもう一つの流れ、”GRIME”も聴けるダブステップ・コンピレーション。ダブステップの様々なヴァリエーションが聴けるという意味でお得感満載!これでもかっていうぐらいに低音グリグリ響かせてます。