- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2005/03/02
- メディア: DVD
- クリック: 127回
- この商品を含むブログ (114件) を見る
さて映画だが、原作はとっくに読んでいたのに実は今の今まで未見であった。「ストーリーはもう知っていて」「感動のドラマで」「3時間もある」という時点で観る気が失せていたのである。「トム・ハンクスで」というのも原因だったかもしれない。
これを何故今になって観たのかというとレンタル屋で他に観たいものが無かったからである。一週間レンタルで3時間の映画を毎日ちびちび観るつもりだったのだ。ところがなんと、観始めると止まらなくなり、結局3時間一気に見てしまった。すいません舐めてました。映画も傑作です。
しかし「感動の人間ドラマ」という触れ込みのわりに、実際はおそろしく陰惨な物語だと思う。黒人の囚人コフィーの”不思議な能力”というファンタジーがなければ、どのエピソードも救い様のないお話になっていたのではないか。そしてエピソードがキングらしくエグい。尿道結石で小便するのに悶え苦しむ主人公など映画史上前代未聞なのではないか。そして死刑囚の監房と、死刑執行の惨たらしいありさまは、「感動」なんて言葉とは裏腹に、観客の下世話な覗き見願望を密かに満たす題材なんではないか。登場人物にも「死んだほうがマシ」「むしろ積極的に死んでくれ」と言いたくなるような厭ったらしいキャラが幾人か登場し、微妙な不快感をずっと与え続けるところなんざまさにキング小説である。ラストだって考え様によってはホラーだしな。
ただこれら全てを、古い時代のアメリカの光景を美しくノスタルジックな味わいで上手く再現して見せているのと、個性的な有名俳優を痒い所に手が届くような秀逸な配役をしていることが映画のグレード感を上げ、結果的に陰惨な現実を癒しという名のファンタジーが救済すると言うメリハリの利いた物語として完成させているのだ。退屈なヒューマニズムのみに堕すること無く、人間の駄目な面、暗い面をあからさまに描いたことも物語りに重みを与えている。大部の原作も綺麗に纏め上げていると思う。才能がある人間がテーマを理解しきちんと作り上げると映画というのはこうやって傑作となるのだろう。今更言うもでもないことですが、やはり良作です。