Lachapelle Heaven to Hell / David Lachapelle

Lachapelle Heaven to Hell (Photo Books)

Lachapelle Heaven to Hell (Photo Books)

アメリカのお茶目なフォトグラファー、デビッド・ラシャペルの最新写真集。TASCHEN社からはこれまで"LaChapelle Land""Hotel LaChapelle"が刊行されていますが、これは箱入り豪華本の3部作目という事になるらしい。実はオレはラシャペルがかなりお気に入りで先の2冊も手元にあったりします。作品的には以前からオフィシャル・サイトで公開されていたものも多いですが、今回初めて写真集にまとめられたのかな?オレのお気に入りだった映画『タクシードライバー』をモチーフにした連作もやっと印刷物の形で見ることができたのは嬉しいです。あと『スカーフェイス』の連作もあるよ。
この写真集では様々な有名モデルが使われていますが、一番多いのはパリス・ヒルトンさんでしょうか。いやあ、自分の事を棚に上げて人様をお馬鹿呼ばわりするのは仁義に劣るとは思いますが、ことパリス・ヒルトンさんに関しては、もう眩しいぐらい頭がすっからかんな表情が逆にラシャペルの陽気なフェティシズム感覚に見事にマッチしていて神々しいばかりでございます。というかラシャペルの写真に登場した被写体は誰もが皆頭すっからかんに見えざるを得ないというところがスバラシイ!そう、資本主義社会に必要なのは欲望することだけさ!役にも立たない観念性を後生大事に抱え能書き垂れるよりも目の前にある”モノ”と目に前にある肉体にひれ伏し渇望し欲情しそして自分もそもそもはモノであり肉体である事に気付けばいいのさ!マテリアル・ワールド万歳!
つまりラシャペルの写真はひとつのイロニーとして見る事が出来るのですが、それは批評ではあっても否定ではない。むしろそんな”今”という現実を積極的に楽しんじゃおう、という確信犯的な楽天性がラシャペルの写真にはあると思います。なによりもムズカシイ事を言わなくたって兎に角見て楽しい写真、というところがいい。それとTASCHEN社から出ているラシャペルは写真集にしては破格の安さだと思う。あと後半の《呑んでばっかりいるアメリカ人》の連作はラシャペルらしくないワザとらしいぐらいベタな写真だが、よく見ると底意地の悪さがひしひしと伝わってきて愉快だった。
■TASCHEN Books Photography - New Titles - LaChapelle, Heaven to Hell