《マスターズ・オブ・ホラー!①》 ジョン・カーペンター、スチュアート・ゴードン篇

『マスターズ・オブ・ホラー』、世界のホラー映画の巨匠13人を集め、それぞれの個性で独自のホラー映画を撮らせたアメリカのテレビ・オムニバス・シリーズです。
今回『マスターズ・オブ・ホラーDVD-BOX Vol.1』ということでDVD4枚組のBOX SETが発売されました。収録されている作品の監督は三上崇史、ジョン・カーペンタースチュアート・ゴードンダリオ・アルジェントラッキー・マッキーラリー・コーエン、ドン・コスカレリ、とそうそうたるメンツです。11月下旬にはこれの第2弾の発売も予定されてますね。今回はこのVol.1収録の7作品を4回に分けてレビューしてみたいと思います。ホラー映画嫌いな人は我慢してね。


■世界の終わり 監督:ジョン・カーペンター (ハロウィン マウス・オブ・マッドネス)

それを観たものは狂気にとり付かれるという幻の映画『世界の終わり』を探すよう命じられた男の運命は?というお話なんだけれどなーんかスカスカだったなあ。お話の雰囲気としてはカーペンターの『パラダイム』や『マウス・オブ・マッドネス』のような不気味さが展開されるんですが、カーペンター流ののったりした演出が彼らしいとはいえ、この題材だとどんな風にもふくらませられるだろうに、どうにも直線的にお話が進んでいきます。例えば映画館を舞台にしたホラーならクライブ・バーカーの『セルロイドの息子』という短編があったし、呪われた書物を探すというポランスキーの『ナインスゲート』なども同傾向の物語だと思いますが、それらと比べても突出した部分が見られません。なんだろなあ、と思ったけど映画内で扱われる情報量が少ないということなのかな。せっかくダリオ・アルジェントなどの名前も出しているのだから、古今のホラー映画の博物的な知識を駆使した展開にしたら面白かったんじゃないかなあ。それらホラー映画の要素を純粋培養した”起源”とでもいえるホラー映画があった…とかさ。翼をもがれた天使が幽閉されている、という出だしも期待させるものがあったんですが、それもそこ止まりで、特に掘り下げたりしていないんだよね。カーペンターのホラー的なセンスは90年代で止まっているような気がするなあ。歳取った、って事なんだろうけどなんだか残念。


■魔女の棲む家 監督:スチュアート・ゴードン ZOMBIO/死霊のしたたり DAGON)

スチュアート・ゴードンは作品自体は『DAGON』しか観た事がないのですが、『インスマウスの影』を原作にしたこれは実は隠れた傑作だと思います。ラブクラフト好きらしくて他にもラブクラフト原作の映画を数作手掛けています。あと検索掛けたら『ウォレスとグルミット』の音楽担当、となっていたけど、同姓同名の別人物でした。なんか焦った…。『魔女の棲む家』はスチュアート・ゴードンがまたもラブクラフトを原作にした作品で、とある古びたアパートに移り住んだ学生が悪夢と怪異に見舞われ…という話だが、21世紀なんだから、いくらなんでも”魔女”はないでしょ。取りあえず舞台は現代で、学生はパソコン弄りながら位相幾何学みたいなものの勉強をしているんだけれど、題材の古臭さは全く払拭されていない。で、顔のあるネズミに生贄の儀式…ってこれいったいいつの時代のホラーなんだ。一応ミスカトニック大学だのネクロノミコンだののクトゥルー神話のくすぐりは出てくるんですが、もう少し現代的なアレンジが出来なかったものか。ラストも引っ張りすぎ。まあこの古臭さがスチュアート・ゴードンの持ち味といえばそうなんだが、それがいいのかといわれるとちょっと…。


あれ?なんか初っ端から雲行きの怪しいシリーズだぞ!?大丈夫かおい…!?