邪魅の雫 / 京極夏彦

邪魅の雫 (講談社ノベルス)

邪魅の雫 (講談社ノベルス)

やっと読み終わりました『邪魅の雫』。発売日に買って読み終わりが1ヶ月後…。オレがいかに読むのが遅いかが窺い知れるというものであります。
一応はミステリーなので粗筋等触れませんが、悪くはないにしても京極夏彦にしては普通なミステリーを書いたなあ、といった印象。これまではタイトルに妖怪を絡めているのを見ると判る様に、人間の心の奥底を妖怪になぞらえて作品に禍々しい雰囲気を醸し出し、そこが京極作品の魅力だったりしたのですが、今回は特に妖怪でなくてもいいんじゃない?と思っちゃうほど普通です。そして京極堂らいつものメンバーの活躍があんまりありません。これはいつもと展開を変えたかった、ということなのかもしれませんが、京極堂の薀蓄や理屈っぽいお話を延々100ページ以上読まされるのが逆に快感になっているファンにとってはなんだか寂しかったりします。だからだらだら読んでたっていうのもありますねえ。大体今回の物語の主要人物って、魅力がないんだもの。だから榎木津が現れるとやっぱりわくわくしますし、ラストでいよいよ”憑き物落し”が始まると「いよ!待ってました!」と掛け声掛けたくなりました。もはや水戸黄門状態なのかもしれんが、それで全然構わないです。これからもこれでやってください。
それとこれは構成とオレの読解力のせいもあるんですが、似たような登場人物が何組か出てきて混乱しました。特にボーッとしたキャラの人間が複数被っていて、それが物語の鍵を握る人物だったりするのだけれども、そのぼんやりした連中にどうにも苛々させられました。もともと京極作品にはぼんやり役の関口さん、ってのがいるんだけれど、この関口さんが今回はきびきびしているように見えたぐらい。ぼんやりしたヤツが何人も出てきてぼんやりした心象風景をぼんやり述べる、という記述が何度も繰り返されるのは、読み進める気力かなり殺ぎましたねえ。そもそも京極作品に限らず、オレ、小説の登場人物の名前って憶えられないんだよー。だからミステリ苦手なんだよー。ってか現実でも人の名前ってなかなか憶えられないんだけどね…。
これで3年待たされたというのは納得行かんなあ。次の長編がいつ刊行かわかりませんが、合間にまたスピンオフものでも出しほしいものです。


…ぱっとしないカンソ−ブンなので、オマケを付けておく事にします。題して《こんな『邪魅の雫』は嫌だ!》。


◎こんな『邪魅の雫』は嫌だ!
ジャミラの雫「この世にはオレの炎で焼かれない場所なんかないんだよガオーッ!」
■シャムの雫「この世には体がくっついて生まれる双子が存在するのですよ。」
ジャミロクワイの雫「この世には踊れない音楽などないのですよ。」
JAROの雫「この世には過剰広告があるから要注意です。」
ファミ通の雫「この世には炎のコマー!みたいな。ズギャッ!」
■邪魔な雫「この世には…おいなんだよ。やめろって。だから。どきなさいって。今やってるんだから。あっち行きなさいてば。」
ジャイアンと静香「この世にはオレのものでないものなんかないんだよ、のび太!」「この世にのび太君の覗かないお風呂なんかあるの!?のび太君のエッチィ!」
■お茶の静岡「この世には静岡茶ほど美味しいお茶はないのですよ。」
■シャツの仕立て「この世には伝統的なシャツ仕立て職人がおり、それはシュミジエと呼ばれているのですよ。」
■三味線の調べ「この世にはぁ〜ベベンベン。」
■メモリの藻屑「この世にはこれ以上しょうもない日記などないのですよ。」
つぼ八のもずく「ヘイいらっしゃい!」
■チャッキーの仕業「この世!キキキキッ!イーッ!イーッ!」


…うううんやっぱりぱっとしなかったか…。