水族館の話

オレの地元には『寒流水族館』というのがあったんですが、なにしろ寒流、水槽を泳いでいるのはサンマやカレイやタラやカニ…など色気のない魚ばかり。そしてお気付きだと思いますがどれも食卓に上る魚が殆ど。だから水族館にいて水槽を見ても、なんだか魚屋の生簀を眺めているような気分…。でも結構好きなスポットで、たいした料金でもないから子供の頃はよく遊びに行ってました。


入るとすぐ漂って来るオゾンの匂いにまず圧倒されます。ボコボコ言うポンプと薄暗い照明、じっとりと冷たく湿った空気。魚たちの奇妙な形、色、動き。動物園の明るさ明快さとまた違った独特の雰囲気が水族館にはありますよね。魚を見るのは好きでしたね。ホヤやナマコなんか見ると「こいつら何の為に存在してるんだ?」としみじみ思うし、熱帯のピラルクの巨大さや寒流の海に住むオオカミウオの醜さ、透明な魚、目の無い魚、夜の闇に降り積もる雪のように漂うプランクトン、ホルマリンの瓶の底の異星人のような海棲生物、じっと水槽の隅にいてパクパク口を開け閉めしているだけの魚たち…どれもこれもただ見入ってしまいます。もっともらしい事を言うと”生命の多様さ”みたいなものに触れるのが興味深かったんでしょう。


入ってすぐは大きな海亀。出口近くではデンキウナギがビリビリと実験装置の電圧メーターを上げ下げしているのが見られます。外にはアザラシとペンギンの泳ぐプールがあり、ここは館内に入らなくとも外から見られたので、水族館の近くに寄ったときにはよく寝転がっているアザラシやじっと宙を見つめるペンギンたちを眺めては帰っていました。水族館の横には赤白縞々に塗られた大きな灯台があり、夜になると群青色の暗く冷たい北洋の海を照らします。


水族館横には『青少年科学館』という小規模な科学パビリオンのようなものがあり、各種の展示や模型が並べられています。『青少年科学館』では小中学生を対象にした科学実験教室が設けられており、オレも毎週通ってました。実験楽しかったなあ。他にもプラネタリウム天文台もあり、プラネタリウムのほうはよく見に行ってました。思いっきり背もたれを倒して、人工の天球に映る星座の解説を聞くのは楽しかった。日本からは見ることの出来ない南十字星の星々などを見ると、「ここではないどこか」にいるような気分になって、なにか胸ときめいた覚えがあります。


海の生物で何が好きか?というと何故かクラゲが好きなんです。飼育は難しいらしいですが、オレのようなクラゲ愛好家(?)もいるらしく、クラゲの水族館もあるって聞いたことがあるけど、行った事はないなあ。