ヘイフラワーとキルトシュー

ヘイフラワーとキルトシュー [DVD]

ヘイフラワーとキルトシュー [DVD]

フィンランド映画である。フィンランドといえばムーミンとサウナとハノイ・ロックスである。マニアックにジャン・シベリウスミカ・ハッキネンと世界一不味い飴「サルミアッキ」(後述)である、ということも出来る。オレのような俗物はサウナ上がってオーロラを見ながらザリガニとスモークサーモンを食しつつアクアビットで一杯、なんて想像すると結構いい国じゃないか、とか思えるのである。


それにしてもだ。「ヘイフラワーとキルトシュー」。タイトルからしてもう愛らしいじゃないか。キャワイイビーム発しまくりじゃないか。キュートじゃないか。ラブリーじゃないか。二人の姉妹の名前であるが、麦藁帽子とベルベットの靴って意味でもあるらしい。確かにヘイフラワーたんはいつも麦藁帽子被ってたな。これがまたキャワイイんだ。
しかしホラー映画10本観た後に観る映画としては最高の作品じゃないか。鮮血スラッシャー・ムービーの後にロリロリ・おにゃのこ・ムービーを観るというオレのメンタリティもかーなーりーヤヴァイ匂いがするが。そしてお部屋はオニンッギョだらけなのである。通報するなら今のうちである。


とまあ冗談はさておき、フィンランド・ファミリー・ムービーである。気楽に観れて楽しくて綺麗な映画である。優しい自然が沢山残る郊外の家に住む小さな姉妹が…というところでなんとなく『となりのトトロ』を連想してしまったぞ。ああいうモノノケは出てこないが、北欧の自然と植生は妙にあの映画と通じるんだよな。遊んだり喧嘩したり、という姉妹の描写なんかもね。
お話はジャガイモの研究に熱中して家族のことを構ってくれないお父さんと、家事がまるで駄目なお母さんと、きかん坊で喧しい妹に挟まれて、ちいちゃなキルトシューが「もっと普通の家族になって欲しい!」と困り果て、もう私拗ねちゃう!といった内容だ。ま、家族というものが抱え得る問題の映画的なカリカチュアといったところだ。だから深刻なものは何も無く、すったもんだでドタバタしちゃう、でも最後はメデタシメデタシ、といった軽いコメディみたいなもんだと思えばよかろう。他愛も無い話だけれど愛すべき人たちの物語。NHKで放送される海外ドラマのようなクリーンなお行儀の良さはあるにせよ、鼻に付く事は無い。


これは登場する二人の少女の愛らしさと映画全体を作るフィンランド流の明るいセンスによるものだろう。北欧家具の趣味は無いけれど、映画ではその内装や家具、お母さんや子供達のファッションや小物などライフスタイルのセンスが図抜けて楽しいのだ。勿論こんな暮らしをしているフィンランド人などはいないと思うが、映画という舞台を構築する時にここまで出来るフィンランド人のセンスはやはり正しいのかもしれない。むう、きっといい国なんだろうなあ。
面白いことに映画ではTVもパソコンも現れない。オーブンや洗濯機、電話はあるのだからそれなりに現代的な家族だと思うのだけれど、こういった外部のメディアの存在を画面の上では一切廃し、家族の会話ややり取りだけを見せているのはコミュニケーションというのはローテクなものの中から生まれるべきだと言う主眼なのだろうか。
アメリカ映画のこまっしゃくれた子供たちばかり出る映画を見せられた後にこの映画を見たりすると、救われた気分になるに違いない。それだけほっとする映画でもある。
いや、それにしてもヘイフラワーたんが可愛い。北欧は子供のころからこんなに綺麗なのだから恐るべきもんである。キャミソール姿なんてちょっとドキッとしてしまった。いや、ロリじゃないからね。ロリじゃないって!