特別料理 / スタンリイ・エリン

特別料理 (異色作家短篇集)

特別料理 (異色作家短篇集)

早川異色作家短編集第11巻。冒頭の序文ではエラリイ・クイーンが絶賛しまくっているんですが、作品はミステリの優等生といった感じで、こなれていて破綻が無い、逆に言えば強烈な癖や毒の欠ける作家のように感じました。あとやはりアイディアは今から見ると風化していたり奥ゆかしすぎていたりと時代を感じることは否めません。

表題作「特別料理」はタイトルから想像できるラストで、宮沢賢治の「注文の多い料理店」の元ネタか?とか思った程度だし、「お先棒かつぎ」はミステリアスに始まるものの随分おとなしい考えオチ。「クリスマス・イブの凶事」も判らないではないが小品過ぎる。「オグルビー氏の〜」に至っては6人奥さん事故死したら誰か何か気付けよ!と突っ込みいれたくなりました、ハア…。「好敵手」はチェスの一人遊びしているうちに人格が…という話だけどドッペルゲンガーネタで犯罪とは古い。「君にそっくり」は「太陽がいっぱい」にそっくりなのはどうしたもんでしょう。「壁をへだてた目撃者」は登場人物の行動の順序が間違ってるだろ。普通事件を確認してから検証するだろ。オチを生かしたいが為の先走り感がわざとらしくて興醒め。「パーティーの夜」は悪夢的な状況から抜け出せられなくなった男の話だが、もったいぶった筆致が読む気を殺ぐ。「専用列車」もねー、これも殺人のための殺人と言いますか、なんでこう簡単にヒトゴロシさせんのかね?この短絡さが辟易となる。「決断の時」はある男と引退した奇術師との対立を描くが、怒りが怒りを産みのっぴきならない状況へと追い詰められてゆく。うーん、このラストもありなのかもしれないが、作家としての想像力の飛躍を見せてほしかったんだけど。

全体的に「異色作家」というよりはオーソドックスで古臭いミステリの短編集でしかないですね。なんだかこう、昔のミステリによくあるような、オチの為に現実的じゃない行動や心理状況を登場人物にさせているんだよね。つまりは頭でっかちな創作手法。だから小説の中の犯罪も、犯罪のための犯罪とでもいうのか、思慮のないヒトゴロシが思慮なきゆえに報いを受ける、という随分当たり前の話で実につまらない。昔はこれでもよかったのかもしれないけれど、今の読者じゃきっついだろうなあ。