雨天靴底始末記

東京は朝から全面的に雨である。
通勤のため、昨夜の痛飲が祟った二日酔いの頭を抱え、三連休明けで鈍った体を引き摺って、雨の中傘を差しだらだらと会社へと向っていたのだ。
どうもオレは一回の飲酒につきビール1.5ℓを必ず摂取するという無意味な几帳面さを守っており、昨夜はそれがちょっと度を越したらしい。ああそれにしても頭が痛い。一人で飲んで二日酔いというのも随分だな、とよく知人から笑われるが放っておいてくれ、とオレは言いたい。
そんな事を考えながら暫く歩いていると左足の靴の中に妙な湿り気を感じ始めたのだ。むう。どうやら雨水が沁みているらしい。さらに歩いていると湿り気は水気に変わりそしてさらに浸水に変わっていくではないか。既に水浸しとなっている左足の靴内からは足を踏み出す度に「ぐっぽん。ぐっぽん。」というふざけた音まで響き出す始末。ここまできてやっと靴底に穴が開いていることに気付いたのだ。
取り合えずすぐには対処できないので、会社に着いたら靴底にガムテープでも貼っておこう。貼ってあれば靴もまだ使えるんじゃね?そう思ったオレであるが、しかし、いい歳してガムテープ貼った靴履いて歩いてんじゃねーよ!とも思ったのである。
まあな。零細企業とはいえそれなりに給料も貰っているのだ。だいたいオレの後輩達はこの給料で夫婦生活してたり海外旅行行ったり立派なマンションに住んでたりするではないか。あいつ等より貰ってるはずのオレがどうしてこうもビンボ臭い生活をしているのか、おまけに貯金も無いではないか。ううむ。オニンッギョとピザに消えているのだろうか。オレはマンションが買えるほどのピザを食ってきたというのだろうか。しかしだ。これを勿体無いという方もいるかもしれない。だがオレは海外旅行もマンションもついでに言えば夫婦生活も興味が無いのである。大体そんなことしたら毎週ピザ食ったりブラ子買ったり出来ないじゃないか!
と言う訳で自らのビンボ臭さを強引に肯定したオレは会社に着くと嬉々として靴底にガムテープを貼るのであった。勿論靴の内側からだよ!あと五年は履けるね!
(追記:読み返して我ながらあまりにもセコイ言動に涙が出たよ…。なんだよ「あと五年」て…。新しい靴買います…。)