丁度

オレの上司であるS氏には数字を言う前に必ず”丁度”と付ける癖があるのである。
「丁度3つ」とか「丁度21本」とか「丁度69枚」とか。
オレはこれにどうも違和感を覚えるのである。
普通”丁度”と言う時には10の倍数などキリのいい数に対してとか、予定に見合った数だったりとかする場合じゃないのか。
しかしS氏の場合数字を言うときは何でもかんでも”丁度”なんである。


しかしオレはふと考えた。
常識に囚われていてはいけないのである。
そもそも上司という生き物に常識なぞ当てはめていてはサラリーマン生活は営めないのである。
オレは気づいた。
これはS氏にとっての枕詞だ、と。
S氏にとっての”丁度”とは、”うばたまの”闇とか”たらちねの”母とか”安さ爆発”カメラのサクラヤなどといった枕詞だったのである。


そうかそうだったのか。
ちなみに”たらちね”とは垂乳根と書くのでやたらめったら女性に使うと
「乳が垂れてるですって!」
とセクハラになってしまい速攻に平手が飛ぶので御用心である。


これで謎が解け、オレの気持ちはすっきりとした。
S氏にとって例えば4238京8966億3783万4243でも”丁度”なのだ。
多分「Sさん、1から100までの整数2つの組み合わせで、最大公約数が分かるまでに、一番割り算の回数が掛かるのは、どんな数字で、何回でしょうか。また、その数字の組み合わせは、ある有名な数列の一部と言えますが、何でしょうか。」
と『ユークリッドの互除法の効率』を質問したら
「丁度89と55、9回。フィボナッチ数列だね。」と答えてもらえるのだろうか。*1
ううん…もしそうだとしたらある意味すごいが…。


そしてオレはS氏に一度だけ試してみたいことがある。
「Sさん、円周率を言ってみてください。」
「それはね、丁度、3. 1415926535 8979323846 2643383279 5028841971 6939937510 5820974944 5923078164 0628620899 8628034825 3421170679 8214808651 3282306647 0938446095 5058223172 5359408128 4811174502 8410270193 8521105559 6446229489 ……。」
そして世界が終わるその日まで、S氏は円周率を唱え続けるのである。


おまけ:『無量大数の彼方へ』 http://www.sf.airnet.ne.jp/~ts/language/largenumber.html

*1:ここからコピペしました。オレにこんなもの判る訳がない!http://web2.incl.ne.jp/yaoki/euclid.htm