フラレた話(その3)

前回までのあらすじ:折角女子を食事に誘ったのに既に結婚が決まっていると訊かされグダグダになったフモ。潔く諦めたのも束の間、彼女から次の予定を訊かれてしまう。そこにはいったい何が待っているのか!?

実は彼女から衝撃の事実を聞かされる前に、どこそこに飯食いに行きたいな、という話をしていたんである。で、どこそこというのはさすがオレ、いつも行っているインド料理の店なのであった…。ええ、取り合えず女子をどこかに誘う時にはインド料理屋に行くんですねオレ…(へえ、そうなんだあ、メモメモ)。パターン決まってますね…。書いててスゲエ恥ずいですね…。
だからこの時言われたのは正確には「で、カレーの店はいつ行くの?」なのであった。


「…え?」とオレ。
「さっき行こうって約束したじゃない、行きましょうよ。」
「あ、はあ。」
目まぐるしい展開にオレは既に付いていけてないのである。今さっきフラレた女子とまた会う約束をする…。なんなんでしょうこれは。やっぱりなあ、人畜無害に見えるんでしょうねェ…。
と言う訳でまた次会う約束しちゃったオレだよ!悪かったな!
ところでその晩は悪夢にうなされました…。女子にフラレて悪夢を見たのは後にも先にもこの時ぐらいですハイ…。


さて。約束したもののいつ、どこで、というのは後日打ち合わせということになったんである。後日…とか言いつつ、A子サンはもう退職しちゃうんである。どうしようかなあ、と思いつつ数日後、別事務所のA子サンに訊いてみる。
「そうだなあ、退職までずっと忙しいんですよォ。だから会うのは辞めてからにしましょうよ。」
「…ハア。でも連絡はどうすれば?」
「自宅に電話もなんだから、B君に言って貰えれば、彼経由で伝わるから。」
「…ハア。」
「大丈夫!彼気にしてないから。」
「…ハア。」
女子とデートの約束を、その婚約者経由でする。なんとアホなことでありましょう。しかしそれを実際にやってしまうオレもオレだが。
もはや当初のスケベ心は微塵もない。ただ約束は約束として果たしたい。
こういうのをなんと呼ぶのか知っている。「お人よし」である。


さてそのB君に連絡してみる。
「ええと。話は聞いていると思うんだが。」おずおずとオレ。
「あー!なんか彼女言ってたよ!」いつもの素っ頓狂な声でB君。
「あのなあオレはやましい気持ちはないただ約束は約束なんでなあ今更反故にするのも気持ちが悪いしそれでなあ…。」などと言い訳がましい理由をあれこれ並べ、日にちを打ち合わせをするオレ…。
「でもなんか変だよなー!ま、いっけど!」と言うB君。そうだ、そりゃあ変だ。B君キミの言う通りだ!しかし怪訝には思っているんだろうが気分を悪くしているふうでもない。彼女のことを信用してるんだろう。オレのことは…何だと思ってたんでしょう…。
と言うわけで彼への伝言は彼女に伝わり彼女からOKだということが彼の口からオレに伝わったというわけだ!
そしてA子サンとは某所で待ち合わせ食事をし楽しく会話を盛り上げ、約束はつつがなく果たされて達者でなァと爽やかに別れたのであった。勿論その後彼女の顔を見ることはなかった。


彼女は予定通りB君と結婚し、二人のお子さんをもうけている。B君もその後退職したが、最後までオレと仲良く仕事をしていてくれた。もともと腹に一物持つ男ではない。暫く前まで年賀状ぐらいはやり取りしていた。年賀状の宛名を夫婦連名にし忘れて彼女の名前を入れなかった時は会社のB君経由で「私宛にちゃんと送って」などと催促されたこともあった…。そしてちゃんと送るオレ…。はい、お人よしなんです…。


これがフラレ男の一部始終の話である。どーだ参ったか!!