トミー

トミー [DVD]

トミー [DVD]

ザ・フーのロック・オペラをケン・ラッセルが映画化した『トミー』のDVDが廉価版で発売されました。


実は『トミー』のサントラって、オレが中学生の頃発売されたんだけれど、これがオレのロック初体験だったんですね。映画好きだったのでよく映画のサントラは買っていたんですが、映画雑誌でお薦めしているサントラは映画を観てなくても買ってしまうほうで、この『トミー』にしてもただ単に評価が高いサントラだから買ってみただけだったんです。正確には、このサントラに収められているエルトン・ジョンの『ピンボールの魔術師』、このシングルを買ったら見事にヤラレタ、という訳でした。なにしろ打楽器でも叩くように打ち鳴らされるピアノの音が凄かった。ロックを初めて聴いたときの背中がゾクゾクする感じ、まさにあの感じでした。オレにとってロック・ミュージックとは、最初ギターではなくピアノの音だったんです。もうヘッドホンを付けてボリューム最大にして何度も何度も聴いていました。


映画のほうはというとザ・フーエルトン・ジョンエリック・クラプトンティナ・ターナーらミュージシャンが出演、俳優ではオリバー・リード、ジャック・ニコルソンアン・マーグレット…とかなり豪華な配役されています。特にアン・マーグレットが今のN・キッドマンを思わせるルックスで、今観ると改めて綺麗な女優だなあ、と思ってみたり。


お話は母親と継父が実の父を殺してしまうところを見てしまった少年トミーが、そのトラウマから目も耳も口も閉ざし、世界と自分とを遮絶するところから始まります。様々な怪しげな治療も効果ないまま青年した彼はしかし、聾唖にも係らずピンボールの世界チャンピオンになって行き…というもの。世界と自分との断絶を抱えた青年が”ピンボール”を通じて自己実現していくというストーリーは、ロックミュージックを通して世界を再発見してゆくということ、青年期の葛藤やコンプレックスがロック・ミュージシャンになることで昇華してゆくということの暗喩なのでしょう。


映画は台詞無し、全て音楽と歌のみで構成されていますが、ブリティッシュ・ロック&イギリスの映画監督、ということで多少捻くれたお話になっています。なんだか変な&危ないキャラがいっぱい出ます。ホンット、イギリス人ってこういうの好きだなあ。美術はケン・ラッセルらしいエキセントリックでビビッドな映像で、今観ても色褪せていないのではないかと思います。ただ主人公が救世主になってからの物語がかなりショボショボなので(というか映画的にこういう風にしか映像解釈できなかったんだろうなあ)観るときは覚悟が必要かも。テーマ曲の『See me,feel me,touch me』というリフレインはさすがに感動的です。