ステルス (ロブ・コーエン監督 2005年 アメリカ)

最新鋭の無人ハイテク戦闘機のコンピュータが叛乱を起こして…というお話なのだが「またぞろ”自意識を持ったコンピューター”かい!」などと多少鼻白みながら見始めたのであった。このテの物語では『ウォーゲーム』という佳作があり、他にも水被った位でパソコンが意識を持っちゃう『エレクトリック・ドリーム』とかコンピューターが女子に子供を孕ませようとするトンデモ話『デモンシ−ド』とか、枚挙にいとまないですが、やっぱり”自意識を持つコンピューター”って一つのファンタジーなんだろうな。これって人間の神様願望なんだろうか。


えー、映画のほうは最初ユルいです。”世界の警察”アメリカが戦闘機を飛ばしては世界平和の為に世界各地のテロリストの本拠を爆撃して回り、殆ど無敵状態で悪玉(?)を蹂躙してゆきます。強いぜアメリカ!アメリカの敵は世界の敵だ!わるものを蹴散らせたあとはパイロット達の愉快なバカンスの様子が描かれます。ここもユルいです。なにしろ俳優に魅力がなくって、恋の駆け引きとか見せられても勝手にしてね、と言いたくなります。


で、まあ、お待ちかねのハイテク戦闘機の謀反が始まりますが、ここから俄然物語りは緊張感を孕んできます。多分画面は全てCGで埋め尽くされているんでしょうが、にやけた顔のアメリカ兵の顔を見ているよりはましです。CG偉い!なにしろドッグファイトが始まってからというもの、今まで見たこともないような空中戦の有様が描かれ、もうここだけ見せて貰ったら映画は大傑作なのではないかとさえ思わせます。他にも空中給油機の大爆破、爆発した戦闘機の火と燃える残骸の雨の中のパラシュート降下、など見所満載。他はユルかったけれどまあ許してやろうか、という気になります。しかし、前半ユルユルベチャベチャの人間ドラマ、後半CG大活躍の大戦闘シーンのギャップって、『パールハーバー』を思い出させますね…。戦闘はないですが『タイタニック』も前半ユルユル、後半VFXてんこもりといった意味では似た範疇の映画なのではないかと思われます。


そして最後の戦闘は北朝鮮!『007/ダイ・アナザー・デイ』『チームアメリカ』あたりで世界で最も悪い奴は北朝鮮ということになってしまいました。『スポーン』でも北朝鮮の秘密基地爆破のミッションが描かれていましたね。これまでアラブのテロリストもなかなかいい活躍をしましたが、やはりアラブ人を叩き過ぎるとなにかと不都合があるのでしょう。この映画でも猟犬のように執拗な北朝鮮兵が描かれますが、あいつら現実ではそれほど強くないんじゃないかと思ってるオレは少しナメてるでしょうか。


ラスト、北朝鮮の軍事基地を阿鼻叫喚の火の海にして、それで最後はよかったよかったとハッピーエンドになるのですが、普通だったらこっから開戦になってしまってるんじゃないでしょうか。まあ、北朝鮮の一つや二つ、いや、十個ぐらいあろうとも、アメリカは屁とも思ってないと思いますが。なにしろその前に原爆一個爆発させてけど、いつの間にか無かった事になっちゃってるしなあ。