Lサイズ

「ぐはっ。DVDもあるしビールも買ってきてあるし、今夜はピザでも頼むべか。」などと例によって宅配ピザを注文したオレなんである。いや、ビール買ってきてある段階でもはやいつも通りピザ食う気満々だったわけで、冒頭の”あたかもたまたま思いついたように”ピザを頼んだかのような文章は実は嘘なんである。すまん。「またかよおい。」という反応を恐れてのことだ。こう見えても結構世間体を気にする性質なのである。


「ねえねえ、『メモリのもずく』とかいうブログ書いてる人って毎週ピザ食べてるらしいわよ」「まあ本当なの。その人デブデブなんじゃないの。」「そうね。見た事無いけどきっと肉まん体型よ。」「イヤねえ。」「そしてヲタなんだわ。」「キモイわねえ。」…などと言う会話が日本全国津々浦々の麗しき婦女子の間で繰り広げられているのかと思うと遣る瀬無いではないか。しかしなんだか”白子さんと黒子さん”の会話みたいだな。まあそれはいいんだがオレの日記のタイトルは『メモリの藻屑』であって『メモリのもずく』ではないからな。そこんとこヨロシク!


それでまあ待つこと数10分、ピザが届いたんだが、配達員が何か言っている。「まことに申し訳御座いません、ただ今Mサイズのピザクラストを切らしてしまいまして、代わりにLサイズをお持ちしました。代金のほうはMサイズのままで結構です。」見ると配達員の抱えているのはまがう事なきLサイズの箱。「はあ、そうですか。」などと受け取ったけれども、こちらは男の一人暮らし、いくらデブデブ&肉まん体型であっても一人でLサイズ一枚など食べきれるもんではないのである。しゃあねえ、半分だけ食ってあとは明日の朝飯にでも、と思ってはみたが、冷めたピザをもう一度加熱しても脂っこくなるだけであまり美味いもんではないのだ。もともとタダみたいなもんだとはいえ、根っからの貧乏性、それはそれで勿体無いことだよなあ、などと思ってしまうのである。


そんな事を考えつつピザに取り掛かる。今回のピザはピザハットの「黒トリュフ・ターキー」と「ウニらんまん」のハーフ&ハーフである。昨今のピザは結構凄いんである。「黒トリュフ・ターキー」はターキー・アスパラ・マッシュルーム・オニオン・マロン・ドライクランベリー・マユネーズ・黒トリュフソース。「ウニらんまん」はずわいガニ・甘エビ・貝柱・赤パプリカ・オニオン・マヨネーズ・ウニクリームソースである。豪華である。


最初の予定通り半分食べる。…どうもまだ食べられそうな気がする。ここでビールを飲むのを止める。残りの半分に取り掛かる。おお。いけるいける。結局一切れ半残してオレはLサイズピザを平らげてしまったのである。つまりLサイズピザに対して85%勝ったということである。なんだオレ、やれば出来るんじゃないか!どんなものでも先入観だけで成否を決めてはいけない、取りあえず取り組んでみること、チャレンジすること、それが人としての価値を決めるのだとオレは思った。今日の85%の成功は明日の100%の成功に繋がるのだ。あきらめずにトライし続けよう。そしていつかLサイズに勝利してみせるのだ。


…う〜ん、なんだこの論旨は…。こうして人はデブになってゆくのである。


ちなみに”白子さんと黒子さん”というのはその昔ロゼット洗顔パスタという化粧品のCMで使われていた漫画のキャラである。「私って地黒なの、どうやったら白子さんのように白くなれるのかしら」「まあ、それだったらロゼット洗顔パスタがお薦めよ」とかいう会話をする白い顔した女子と黒い顔した女子の二人組である。今だったら「私アフィリエイト始めたんだけどなかなか成果が出ないの、どうしたらいいのかしら」「まあ、それだったらmixiで足跡残しまくったりウェブサイトや掲示板にコメント入れまくるのもいいわよ」とか言ってる主婦みたいなもんを想像していただければよいか…ってちょっと違うか!