Blood Sweat And Tears: Or How I Stopped Worrying And Learned to Love

Fashion / Bruce Weber (著)

Blood Sweat And Tears: Or How I Stopped Worrying And Learned to Love Fashion

Blood Sweat And Tears: Or How I Stopped Worrying And Learned to Love Fashion

ブルース・ウェバーといえばファッション・フォトグラファーの大御所ということでいいのだろう。80年代、カルヴァン・クラインのアンダーウェアの広告写真で有名になった彼だが、イメージとしてはメール・ヌードの写真家としての印象が強い。この写真集は彼のファッション・フォトグラフの集大成的な意味合いの強い作品集である。

この本は彼の30年間のファッション写真をまとめた400ページを超えるファン待望の写真集です。
「これらは単に洋服のかたちを記録した写真ではなく、私たちがファッションを、その本質、構成、人間の精神面からどのようにとらえているかを表している。現在の世の中は不条理なことでみちているが、ファッションを撮影することの素晴らしい点は世の中の問題を解決はしないものの純真さを無くした世の中に少なくとも想像力の芽生えを与えることができるのではないか」とウェバーは語っています。ファッションを扱った彼の写真がアートとして評価されているのはこの取り組み姿勢所以です。
各国版ヴォーグ、インタビュー、GQ、W、ヴァニティー・フェアーなどに収録されたイメージ、未発表作品、ウェバーのパーソナル・ノートや掲示板からの抜粋を含む、カラー約107点、モノクロ約216点、着色約21点の作品が収録されています。
http://artphoto-site.com/b_387.html

いや、なにしろこの写真集、でかい(50x40x10cmぐらい)、重い(片手で持てない)、高い(¥16355…)。オレの今まで買った最大最重最高価格の本であり写真集である。その分見ごたえたっぷり、豪華な雰囲気満点である。部数にもよると思うが、こういった写真集は再販されないことが多く、この写真集も数年後にはとんでもない価格で取引される事が想像される(ブルース・ウェバーの過去の作品は10万円単位で売買されているものもある)。
メール・ヌードの写真家、などと買いたが、彼の写真にはしかし、エキセントリックな部分や尖がった部分がない。ゆったりとおおらかで美しいのだ。写真のシチュエーションはどこかノスタルジックなスパイスが加味されており、フィッツジェラルド華麗なるギャツビー)の時代ほど古くはないとしても、どこか”グレート・アメリカ”を連想させる白人文化の栄華を感じ取る事が出来る。それは満ち足りており、永遠に続くもののようにさえ見え、しかも退廃がない。ブルース・ウェバーの写真の面白いところはこの翳りのない典雅であり、逆に言えば生々しい深みや現代性はない。しかしだからこそファッション・フォトグラフという非日常の”夢”を撮り続け、これだけ高い評価を得るのかも知れない。そこにあるのは幸福の情景のみを切り取ったスナップ・ショットであり、それは過去のものであるとしても、そこで切り取られた世界は永遠の幸福の中にあるのだ。
ブルース・ウェバー/プロフィール:http://artphoto-site.com/story21.html