黒眼鏡(闇がたり篇)

いつの頃からかフモことこのトウヘンボク、朝は黒眼鏡無しだと日差しが眩しくて堪らなくなっちまったと思って下せえ。
そんなもんで、会社に出るときゃあ朝っぱらから黒眼鏡をして家から出る辛気臭え男でごぜえやした。したっけ多分本当は、毎朝やさぐれた気分を抱えてるもんだから、黒眼鏡でもしていないと居た堪れないんでごぜえやしょう。
そして一緒にiPodのイアーフォンで耳ぃ塞ぎ、外界の情報を殆どシャットアウトするならば、ほうらもうそれは「こんな世界なんて見たくもない」という現実乖離状態。
これでさらに携帯ゲームでもした日には(しかも黒眼鏡)、外に出ていながら引きこもラー。嫌いだ嫌いだこんな現実なんて大嫌いだああ!(いい加減にしろよいい歳なんだからおっさんよお)
トウヘンボクことこのオレ様、物を落としたり無くしたりと、粗忽な真似は滅多にないんで御座いますが、黒眼鏡だけはよく無くすんで御座います。
この間は値段ばかり一丁前、しかして作りのちゃちい黒眼鏡、1個壊したもんで御座いますから、黒眼鏡無しの日々が続き、どうにも落着かない思いをしていたのでありやした。ああこりゃなんとも依存症。
そういう訳でつい昨日、トウヘンボクことこのオレ様、近所の眼鏡屋に寄りまして、新しい黒眼鏡を探しておりやした。
思えば幼少のみぎりより、勉学なんざあ縁のねえ、大馬鹿野郎の頓珍漢で御座いますから、眼鏡屋にゃあ縁がなく、だから未知の世界で初体験、おっさんが一人眼鏡屋でドキドキしやがってると思ってくだせえ。
もとからたいしたご面相でもないってぇのに、散々悩んではとっかえひっかえ、あたりの黒眼鏡を指紋だらけ手垢だらけにした挙句、結局選んだその品物は、何処にもここにも転がってるような、なんとも地味ぃな黒眼鏡。
そんな訳では御座いますが、今日から早速黒眼鏡、不細工なツラに引っ掛けまして、トウヘンボク事このオレ様、意気揚々と朝日を浴びて、素っ頓狂な鼻唄うたい、スキップ踏みつつ出掛けましたとさ。
…ううう、浅田次郎の大正ピカレスク・ロマン『天切り松 闇がたり』シリーズが面白いんだよお。と言うわけで文体真似して見ました。

天切り松 闇がたり〈第1巻〉闇の花道

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天切り松 闇がたり〈第2巻〉残侠

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天切り松 闇がたり〈第3巻〉初湯千両

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