サンドマン(3)(4)/ドールズハウス上・下

冒頭のアフリカとみられる部族の成人儀式で語られる伝説について描かれた物語が秀逸。夢=観念の世界と結ばれようとした娘は何故悲劇的な末路を迎え、そして彼女の治める都市は滅びなければならなかったのか。どうとでも解釈は可能だけれども、ひとつの答えを出すより数々の神話伝説をニール・ゲイマン風に再構築した逸話を堪能することが楽しい。

本編のほうでは新たにサンドマンの7人の兄妹のうち『欲望』と『絶望』が現れ、ここで、これからのサンドマンと云う物語はこの彼と彼の兄妹の確執を巡る物語として描かれるのだろうことが予想される。(実際はどうなのかは知らないのだが…)そしてこの7人の兄妹と云うのはあくまで人間の観念が具現化したものであり、世界の影であると語られる。

夢の世界から逃亡した3つの『夢』が現実世界で起こす事件とそれを追うサンドマンシリアル・キラー達の集会、そして弟を探しに旅してきた少女、そして彼女の虐待され続けていた弟。さらに少女が夢の世界に引き起こすという『渦』を巡るサンドマンの決断。様々な要素が混沌として交じり合い、ラストのカタストロフィーを経て、最後に人の生と死についての物語として収束してゆく。

しかし全体を見渡すとストーリーは若干散漫に感じた。意味ありげなキャラクターたちが意味ありげなだけで終わってしまっている感もあり、その辺は煮詰めるべきだったような気も。ただ『ノクターン』でもそうだったが連作短編のような構成で最終的にひとつの長編として成立させているので、どうしてもこの形になっちゃうんだろうなあ。