ビクッ

その男子高校生は恐ろしく疲れていたのか単に寝不足なのか、電車のオレの隣の席に座るとすぐに居眠りを始めた。
オレはその時、いつも通りイアホンして音楽聴きながら本を読んでいた。
それで。居眠りしている高校生が、ビクッと動くんだ。ビクッと。眠っている時にはよくあることではある。ビクッっと動く事は。
(でも、そういえば、あれはなぜあんな風に動いちゃうんだろうね?)
まあ、それはいいとして、まあこの高校生、そりゃもう、いい感じにビクビク痙攣するんだ。
ぐったりとオレにしなだれかかったりしてるから、その動きが実にダイレクトに伝わって来るんだ。
イアホンして音楽聴きながら本を読んでいるオレに、見知らぬ男子高校生がビクッ、ビクッ、と痙攣しているのが伝わって来るんだ。
オレが本3行読んではビクッ、ページを捲ってはビクッ。
『…しかし石像が神殿に据えられた夜に恐ろしい事が起こったに違いなく、不気味な光りが幾つも湖上に見え…』
ビクッ。
『…タラン=イシュが破滅の徴を書き残したカンラン石の祭壇も…』
ビクッ。ビクッ!
『…いいようのない緑色のものが、恐ろしげに跳ね回り…』
ビクッ!ビクッ!ビクッ!
『…狂えるアラブ人、アブドゥル・アルハザードの悪名高い『ネクロノミコン』を持ち帰った夜の事…』
ビクッ!ビクッ!ビクッ!ビクッ!!
そして男子高校生は突然弾き飛ばされるように立ち上がるとオレのほうを向いてこう言った。
「あざとほおす!ないあるらとほてっぷ!」
…いやあぁあぁあぁあぁあぁあぁああぁぁっ!!!!
(すいません。後半フィクションです…)