- 出版社/メーカー: 日活
- 発売日: 2005/04/08
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という訳で《エクソシスト・ビギニング》、見応えのあるなかなかの秀作である。なにより、主要な登場人物達の暗く秘密に満ちた過去の設定がいい。信仰を捨てて一介の考古学者に成り果てた主人公メリン神父の魂の闇がいい。そして発掘現場で一人女医をしているユダヤ人女性サラのつらく悲しい過去がいい。そしてそれらの背景にあるのはナチス・ドイツというある意味黒魔術的な破壊を繰り広げてきた闇の軍団なのだ。これら心の闇を持つものたちの絶望と希望が拮抗する地の果ての荒野で、悪魔という名の「絶対の死」が全てを瓦礫と虚無に変えていこうとするとき、いかにして人間的であろうかともがき苦しむ人々の心の様がいい。
ホラー映画としてみれば、監督のレニー・ハーリンは娯楽映画のツボを押さえた良い監督だとは思うが、そのバランス感覚のよさが逆に、映画的構成を無視して死と荒廃を偏執的に描くホラー映画のセオリーを踏むことができず、まとまりのいいショッカー映画として仕上げてしまった感もあるかもしれない。即ちレニー・ハーリンには幸か不幸か超常的なものを描くことができる暗く狂った(平たく言えば変態的な)センスが無いのだ。
それにしても、第一作から早数十年、「エクソシスト」という映画がこのような《サーガ》として地道に作られ続けてきたことは興味深い。